写真・文/植田正恵

205回.離島とコロナ
月刊アクアネット2020年6月号

 昨年12月の時点で早くもご予約で満員御礼になっていた今年のゴールデンウィークは、新型コロナウィルスのせいで4月半ばに壊滅が確定した。

 ヘタをするとそうなるであろうことは1月下旬頃から覚悟していたとはいえ、島民のほとんどがGWから秋までの現地観光業で生活している水納島は、在宅勤務などできるはずはなし、雇用調整助成金など意味不明、マスク2枚送ると言われても…

 …となると、これがGWだけで済むのか、この先持ち堪えられるのか、経済的にはまさに「緊急事態」になっていた。  

 一方外出自粛を余儀なくされている世間では、ストレスが溜まることによる様々な問題も生まれているという。

 たやすくストレスが溜まり、たやすく暴力などで発散するヒトが現代人にはなんと多いことかと今さらながら驚かされる。

 その点水納島の島民にとって緊急事態宣言下の外出自粛は、普段の生活となんら変わるところがない。

 もともと島内に外食できるところは無し、遊興施設皆無、スーパーはおろか商店すらないから、何をするにも連絡船に乗って本島へ行かねばならない。

 だからといって船賃はバカにならないし、本島に居るだけで何かと散財してしまうため、普段から本島に出る回数を必要最低限にしている=島外出自粛している我々としては、東京都のように「買い物は週に3回まで」だなんて、何を言っているんだろう?ってなものだ。

 もとより過疎の島のこと、島内で散歩、畑仕事、釣り、ダイビングなどなんであれ、家から出て個人的に何かをするなら誰にも会わずに完結するのだから、自粛警察に睨まれることもない。

 観光客皆無で収入の道が閉ざされているという将来的恐怖にさえ目を瞑れば、生活自体はまったくノーストレスといっていい。  

 よくよく考えると、行楽日和が多くなるこの過ごしやすい季節に島内全体で観光客皆無だなんて、島生活26年目にして初めてのことだ。

 日帰り海水浴客が連日大勢訪れることもなく、いい季節の水納島を島民だけで堪能できる幸せ。

 例年なら洋上にひしめく本島からのダイビングボートもなく、ダイバーが引きも切らず訪れることがなくなった海中は、この先もう二度と味わえることが無いだろうと諦めていた、その昔のおだやかさとにぎやかさを取り戻している。

 水納島の自然回復(と快適な暮らし)のためには、もっともっとコロナ禍が長引いたほうがいいのかも…などと不謹慎なことを考えてしまったくらいに、緊急事態宣言下の平穏はなんだかとても素敵だ。

 高いお金を払ってリゾートに来ていると思えば、実に楽しく快適な自粛生活。

 田舎って素晴らしい。

 世の中はようやく経済活動再開の動きになってきてはいるものの、いきなり例年のように観光客がどっと押し寄せる、なんてことにはならないだろう。

 「観光」に来てもスマホ画面を観ている時間のほうが長い、旅行先など実はどこでもいいヒトたちが大勢押し寄せ、その需要に合わせててんやわんやになるよりも、ホントにここに来たいと思っている方々だけに来てもらえるほうが、たとえ経済的な「成長」とは程遠くとも多くの人がシアワセになれるような気がする。

 少なくとも今シーズン中に狂騒的インバウンドが復活することはないだろう。

 禍福はあざなえる縄の如し。

 ある意味コロナ禍は、失いかけていたシアワセを思い出させてくれた「コロナ福」なのかもしれない…。

             (※個人の感想です)