写真・文/植田正恵

211回.ゆんたくタイム
月刊アクアネット2020年12月号

 コロナ禍でどうなることやらと思われたけれど、おかげさまで今年も無事にシーズンを終えることができた。

 例年同様10月一杯でシーズンオフにしてしまうことができるのは、これすべてGW壊滅に伴う持続化給付金のおかげである。

 日本ていい国だなぁ…。  

 シーズン中の我々のダイビングの仕事は、日中お客さんと潜ればそれでおしまい、というわけにはいかない。

 アフターダイビングには、その日潜った場所やそこで出会った生き物たちを振り返りつつログ(ダイビングの記録)をつけるゲストにお付き合いするのも、大事な仕事のひとつだ。

 ロギングタイムなどとシャレた言葉で呼ばれることもあるその時間は、普通は30分ほどでこと足りる程度のもの。

 なのでショップによっては夕刻のちょっとしたひとときにチャチャチャとやって、ハイ、おしまいということもある。

 しかしながら商店ひとつ無い小さな島のこと、そこで宿泊なさっているゲストにとってせめてものひとときを…という思いもあって、ロギングタイムは民宿での食事後に、軽く泡盛でも飲みながらその日のダイビングを振り返りましょうということにした。

 そう、あくまでも趣旨はダイビングのログ付けであって、酒はあくまでも副次的なモノだったのだ。

 ところがやがて、リピーターのゲストの方々を中心に自分で飲みたい酒や肴を持参されるようになり、気がつけばいつの間にか「飲むために潜る」というヒトが増え、その時間はいつしか「ゆんたくタイム」という名で呼ばれるようになった。

 お住まいもお仕事も世代も様々な方々が「ダイビング」という共通項だけで一堂に会する酒席は、我々にとっても「シゴト」を忘れて楽しめる席でもある。

 ただし酒豪ゲストがいらっしゃろうものならエンドレスナイト確定で、翌朝はゲストも我々もヘロヘロ…という本末転倒状態になることも。

 もっとも、ゲストも我々も相対的に年齢を重ねているので、おのずと夜の体力にも限界が生まれる。そこで近年は12時にはお開きにするというシンデレラタイム制度を定め、夜の休業日を週一で設けさせてもらうことにした。

 それでも酒や肴に情熱を燃やすゲストは相変わらずお元気なので、シーズン中の我々は「夜こそが本番!」という状態に変化はなかった。

 ところが今年はコロナ禍のせいで、その文化(?)の大幅な変更を余儀なくされた。

 ダイビングそのものは感染対策上基本的に問題はないものの、ゆんたくタイムの場所は広さ8畳ほどの小さなプレハブ小屋で、夏場ともなれば冷房を効かせているだけにまさに3密状態になる。

 さすがにこれまでどおりそこで飲むわけにはいかない。

 かといってダイビングと同じくらい…いやそれ以上にゆんたくタイムを楽しみにしている多くのゲストのみなさんのことを思えば、日中のダイビングのみで終了というのは切なすぎる。

 さあて、どうする?  

 思案の末に、母屋とゆんたく部屋の間にあるウッドデッキを酒席の場として開放することにした。

 ただし連日夜通し庭先で騒いでいたんじゃ近所迷惑だから、酒席は従来の食事後ではなくアペリティフとし、夕方5時以降各民宿の夕飯時刻までとした。

 当店史上初めての試みは完全に見切り発車だったのだけど、日が長い夏場であっても5時以降ならデッキ上は日陰で爽やかな南風、見上げれば青空、そして秋になれば名月や星空の下でお酒を飲みながらゆんたくできるので、むしろこのほうがいい、とゲストのみなさんにもなかなか好評だ。

 もちろんそのためには「天気さえよければ」という条件が必要なのだけど…。