水納島の野鳥たち

アカガシラサギ

全長 45cmほど

 2022年春のこと。

 久しぶりに牛小屋方面に向けて歩いていると、沿道の草むらからサギの仲間が飛び立った。

 オフシーズンによく観られるダイサギ(チュウダイサギ)だと、遠方から存在がわかるような場所にスク…と立っていることが多いのに、このサギは完全に草むらに埋没していたらしい。

 しかも飛び立った姿は両翼だけが真っ白で、頭から背中は一直線に黒っぽい色。

 はてさて、こんなサギなんていたっけか?

 ひょっとして…サギに似せた詐欺?

 さらに歩を進めていると、また同じ種類のサギ改め詐欺が飛び立った。

 向こうもビックリしているんだろうけど、サイズがサイズだけに、どちらかというとこちらのほうが相当驚かされている気がする…。

 同じヤツだったのだろうか、それとも別の個体だったのだろうか。

 すると今度は2羽同時に飛び立った。

 帰り道でも上空を飛んでいたこのサギ改め詐欺、結局何羽いたんだろう?

 というか、そもそもコイツは誰だ?

 後刻調べてみると、ゴイサギっぽく見えるけど違うようだし…

 あ。

 アカガシラサギ!

 アカガシラサギといえば7年前(2015年)のオフシーズンに、姿は何度も観たのに撮るチャンスがまったくないままで終ってしまった鳥ではないか。

 その無念な思いを当時拙日記で述べたところ、

 「また出会えたらゼヒ写真を!」

 とコメント欄でころんたさんから激励(?)していただいた。

 にもかかわらず、すみません、完全に忘れておりました…。

 7年前の悔しさをすっかり忘れていたものだから「再び千載一遇のチャンス!」と島じゅうをサーチしたりもせず、PCシゴトをしていたある午後のこと。

 畑から戻ってきたオタマサが路上にアカガシラサギがいるのを見つけ、ジョニ黒を手に現場に戻って撮ってきてくれた。

 こうして見ると茶色っぽいサギのように見えるけど、大きな翼を広げると…

 黒いほうが小さくなる。

 やっぱこりゃ詐欺だな…。

 車に乗っていれば逃げないということを知っていながら、なぜだか車から降りてしまうあたりがオタマサで、それでアカガシラサギが逃げちゃったもんだから慌てて撮ったのが上の飛んでいる写真。

 いつものオタマサならこれで終了のところ、サギから見てオタマサが小さいからバカにしたのか、10m先で舞い降りた後は、自然なふるまいを見せるようになったという。

 で、アカガシラサギは…

 トカゲかカナヘビらしきものをゲット。

 そして飲み込んだ。

 どうやら美味しかったらしく、アカガシラサギはご満悦の様子だ。

 図鑑的には水田とか沼沢地をエサ場にしているようなのに、こんな草原(道路ですが…)でもちゃんとエサ場になるらしい。

 色味的に冴えない冬羽に比べれば遥かに見栄えのする夏羽だから、夏に向けての旅の途中にちょいと立ち寄った…といったところだろうか。

 国内では観察例が少ないというアカガシラサギ、いったいどこへ飛んでいくのだろう?

 その翌月、また例によって昼食後の散歩で旧牛小屋方面に向かって歩くと、アカガシラサギは例によって沿道の草むらからビックラこいて飛び立った。

 行きと帰りで何度も飛び立つのだけど、帰りには同じ視野の中に3羽見えた。

 なんとなく雰囲気的にもう1羽いるっぽいから、アカガシラサギおそらく現在4羽滞在中なのだろう。

 その散歩では残念ながら3羽一緒のシーンは撮れなかったけれど、アカガシラサギは高木の上にも止まることを知った。

 アカガシラサギに出会うためには、時には頭上に目を向けている必要があるらしい…。

 その後だんだん民家に近いところも餌場にし始めたのか、我が家の目の前の草むらで姿を見るようになった。

 そのため家から出ていくときも、帰ってくるときも、いつ通りかかってもたいていそこから飛び立っていくほど頻繁にウロチョロしていたアカガシラサギ。

 牛小屋方面で出会った当初は泡を食ったように飛び去っていた彼も、段々慣れてきたのか、その頃には同じ逃げるにしても多少の余裕を感じさせていた。

 ゲットできるカナヘビの量に比べれば、ヒトの存在など大したリスクではないということなのかもしれない。

 それはともかく、アカガシラサギといえばそれなりにレアバードのはずなのに、家の前でフツーに観ていていいんでしょうか…。

 今年(2023年)も姿を見せてくれるだろうか、アカガシラサギ。