全長 27cmほど
2019年の早春、当時現役だったマサエ農園畑1号のトマトに悪さをしていた鳥は、トマトの害鳥の代表格ヒヨドリとはまったく異なる、真っ黒な鳥さんだった。
遠目にしか見られず、画像記録も残せなかったから、記憶を頼りに調べてみたところ、ジャワハッカという鳥ではなかろうか…というところに落ち着いた。
ところがその翌年3月、普段軽トラを駐車している家の前の草地に、前年に見かけた黒い鳥とそっくりな鳥さんの姿があった。
こうして画像に残せると、正体を調べる際にあやふやな記憶を頼る必要が無いから楽チンだ。
目の周りのイエローリングが印象的なこの鳥は、その名をクロウタドリというらしい。
沖縄では冬から春頃にかけてたまに観られるはしても本島地方ではレアで、西表や与那国ではわりと数が多いのだとか。
冬場の水納島ではお馴染みのシロハラと同じツグミ科の鳥で、ここをひと足早く縄張りにしているシロハラ(手前)が、遠慮がちに自らの優位を示しつつ、クロウタドリに圧力をかけていた。
前年同時期にマサエ農園のトマトに被害をもたらしていた鳥は、時期限定だったことといいその様子といい、ジャワハッカではなくこのクロウタドリだったような気がしてきた(ジャワハッカは水納島では未見ながら通年沖縄に居る)。
ジャワハッカ、トマト泥棒の濡れ衣を着せてすまぬすまぬ。
ところでクロウタドリには「黒つぐみ」という通称があり、ウィキペディア的情報によると、ビートルズの曲のひとつである「ブラックバード」も、名探偵ポワロの短編「24羽の黒つぐみ」の元ネタであるマザーグースの歌の「黒つぐみ」も、どちらもこのクロウタドリのことなのだそうな。
ところがこれとは別に、「クロツグミ」という和名の鳥もいる。
「あぐー」と「アグー」では商標登録している業者が異なる、というケースと同じくらいややこしい…。
ちなみに黄色い嘴とアイリング以外冴えない色味の鳥ながら、「歌鳥」と呼ばれるだけあってその囀りはかなり声量豊かで美しい。
もっとも、実際に目の当たり耳の当たりにしたわけじゃなくて、ネット上にアップされている「クロウタドリの鳴き声」を聴いただけなんだけど、1羽ならばともかく、これが24羽もいたらえらいことになりそうだ…。
昨年(2022年)3月にも、クロウタドリが再訪してくれた。
マサエ農園畑1号そばの未舗装路に出没していた、とオタマサが教えてくれたので、さっそくジョニー片手に軽トラで駆けつけてみると(歩くのが面倒なのではなく、ヒトの姿を見せるよりも車のほうが近づけるから)…
…軽トラをやや気にしつつも、逃げずにその姿を拝ませてくれた(距離約30m)。
本来は平地でエサを探す習性らしく、未舗装路上でしきりにエサを物色していたクロウタドリ。
水納島で確認することができる「冬鳥」には、「開けた平坦な土地」を好むものが多い。
かつては農業の島だったから耕作面積が広く、島のあちこちが「開けた平坦な土地」で、それぞれの畑を利用するために整備されている未舗装路も「開けた草地」になっていたから、この種の鳥さんたちには格好の餌場になっていたのだろう。
この時のクロウタドリの様子もまた、未舗装路の役割がよくわかるシーンでもある。
その道路を軒並み舗装するとか、草地だったところが様々に開発されて草地ではなくなっていけば、クロウタドリにかぎらずこの先観られなくなる鳥は確実に増えていくことだろう。
ただでさえ本島地方ではレアなクロウタドリ、昨年の再会が見納めとなってしまうか?