水納島の野鳥たち

ミサゴ

全長 60cmほど

 のどかに時が流れるオフシーズン、晴れた日にふと空を見上げると、楽しげに舞っている大きな鳥の姿が見えることがある。

 ミサゴだ。

 アメリカ軍が使用している回転翼機のために、日本では和名よりもむしろオスプレイという英名のほうが有名になってしまっているけれど、オスプレイがミサゴのことだとご存知ない方のほうが多いかもしれない。

 ミサゴは翼を広げるとトビよりも大きな大型の猛禽類で、日本のレッドデータブック的には準絶滅危惧種扱いながら、極地を除くほぼ世界中に分布しており、水納島でも少数が通年観られる。

 水中のお魚さんを主食としている猛禽類なので(でもトカゲっぽいものを咥えながら飛び立ったミサゴを観たことはある)、海辺や川辺、湖のほとりなどにいることが多い。

 それが小さな水納島では全島どこにいても海辺だから、せいぜい1~2羽しかいないだろうに、目にする頻度は高い。

 魚をゲットするために見晴らしのいい場所で羽を休めているので、水納港の出入り口の航路脇に立っている赤灯台に止まっていることも多く、オフシーズンにボートで航路から出る際に、赤灯台から飛び立つ様子を観る機会もけっこうある。

 ただし夏場の赤灯台はアジサシたちの縄張りになっているし、航路の通行量も多いこともあって、シーズン中に赤灯台でミサゴを見かけることはほとんどない。

 そういう季節には島の裏側、海岸が岩場になっているところにいるので、海岸伝いに通りかかると思いがけず大きな猛禽が飛び立ってビックリした、という方もいらっしゃることだろう。

 いずれにせよ気がついた時には飛び立っているから、止まっているところをじっくり観たことはなく、ミサゴといえばいつも飛んでいる姿。

 オフシーズンには定番の北寄りの強めの風が吹いていると、翼面積が広い猛禽類なら羽ばたかずともずっと同じ場所で定位し続けられ、まるで風の谷の姫様が乗るメーヴェのように、心地よさげにほぼ1日じゅうスーイスーイと舞っている。

 その様子が↓こちら。

 2羽で楽し気に舞っている様子は、なんだか映画「トップガン」(1作目)のエンディングのF-14 のよう…

 …って、トムキャットじゃなくてオスプレイだけど。

 ところで、風の音がうるさい動画の冒頭と終盤に聴こえるやけに可愛らしい声、実はこれがミサゴの鳴き声だ。

 猛禽というイメージとその姿からは掛け離れているから、この声の主がミサゴだと認識できるまで、けっこう長い年月を要してしまった。

 で、ノーマルバージョンの鳴き声がこのような感じなのに対し、見上げた師走の空に舞っていたミサゴの声は、なにやらエマージェンシーチックな緊迫感が漂っていた。

 動画は短時間ながら、この日は何度も長い直径の円を描きながら、島の上空をグルリと回っては、このたて続けの鳴き声を発していた。

 普段飛んでいるときは引っ込めている脚を、獲物を掴んでいるわけでもないのにダラリと下げて、いつになく羽ばたき続けるミサゴ。

 いったいなにがあったのだろう?