水納島の野鳥たち

サンコウチョウ

全長 45cmほど(オス)

 その昔旧我が家に住んでいた頃、庭の奥に植えていたパッションフルーツやシークヮーサーのさらに奥の林に、サンコウチョウが居ついていたことがあった。

 家に居ながらにして独特の鳴き声をよく耳にしていた当時は、「これがオキナワの田舎の実力かぁ」と当たり前のように思っていたものだった。

 ところがその後すっかり縁遠くなってしまい、それがいかにゼータクなことだったか、今さらながら身に染みている。

 当時は声はすれども姿はなかなか見えず、たとえ姿を見ることができても、とてもじゃないけど撮影するチャンスには恵まれず、記憶に残るだけの懐かしい鳥さんでもある。

 そんな懐かしいサンコウチョウの声を、この春(2023年)久しぶりに耳にした。

 毎朝の日課になっているカメさんのエサ採りで灯台に続く道を歩いていたときのこと、

 「月、日、星、ホイホイホイッ!」

 の「星」が無いパターンで、「ツキ…ヒ…ホイホイホイッ!」と、声量豊かな鳴き声が、沿道の林から響き渡っていた。

 お月様とお日様とお星様、すなわち3つの光を唱えるかのような鳴き声にちなんで、風雅な和名がついているサンコウチョウ(三光鳥)。

 水納島で収録したものではないけれど、サンコウチョウの声は↓こんな感じです。

 素直な心で聴けば、「ツキ、ヒ、ホシ(は微妙)、ホイホイホイッ!」と聴こえるはず…。

 数日後再訪し、また声を聴けるだろうか…と耳を澄ませてみたものの、気配はまったくなし。

 そのかわりキビタキと久しぶりに遭遇した。

 そのキビタキを見たいというオタマサとともに、昼時にもう一度散歩をしてみたところ、幸先よく目当てのキビタキに遭遇。

 目的を果たせたので、あとはのんびり散歩でも…とそのまま灯台に向かって歩き始めたその時、我々の目の前にまさかの鳥さんが、林からポンッ!と現れた。

 さん・こう・ちょう!!

 それもオス!!(メスは尾羽が短い)

 この日は朝からまったく声がしていなかったこともあり、すでに島を去ったかとすら思っていたくらいだから、姿を現すだなんてまさかまさかのサプライズだ。

 最初に止まった枝からすぐに飛んで逃げちゃうと思ったので、アワワアワワ…していたら「早く撮って!」とばかりに絶好の場所にヒョイッと移ってくれた。

 満塁の大チャンスにど真ん中のゆるいストレートを3球続けて投げてくれるほどのビッグプレゼントとなれば、いかにチャンスを逃すことに定評のあるワタシでも、このチャンスを活かすことができた。

 それにしても、まさかサンコウチョウのオスをじっくり眺められて、しかも写真に残せる日がこようとは…。

 長い尾羽に目を奪われがちながら、髪型はなにげにファンキースタイルだし、ターコイズブルーのクチバシとアイリングが相当エキゾチックジャパン。

 お腹の周りが白いなんてことも、今まで意識したことなかったなぁ…。

 サンコウチョウは沖縄を含め国内では「夏鳥」だそうで(沖縄で観られるものはリュウキュウサンコウチョウという亜種であるという話もある)、4月くらいに南方から渡って来るらしい。

 ということは、住み心地が良ければ、今夏ずっと灯台付近に居続けるかもしれない。

 はたしてこれからシーズンが始まってにぎわう水納島は、サンコウチョウにとって快適な暮らしの場であってくれるだろうか…?

 ちなみにこの日夕刻にジョギングをしていたオタマサがこの道を走っていたところ、同じ場所からまたサンコウチョウが飛び出してきて、オタマサをじーっくり観察していたという。

 営巣準備をしているところに通りかかるモノを、オスがチェックしていたのでは…とオタマサは言うのだけれど、ワタシはオタマサのことを「エサかな?」と見ていたんじゃないか説を支持している。

 はたして真相は?