全長 35cmほど
沖縄でクイナと聞けば、誰もが思い浮かべるのはヤンバルクイナ。
でももちろんながら水納島にヤンバルクイナはいない。
そのかわり、シロハラクイナという、飛翔能力がけっこう高いクイナが観られる。
留鳥なので季節を問わず島におり、旧我が家で暮らしていたその昔は家の周辺にずっといたから、姿をチラ…と見かける機会も多かった。
もっとも、その姿を目にするのはかなりハードルが高く、藪に逃げ去ったり飛び去る寸前に後姿を見るのがせいぜいだ。
姿を見るだけでも至難のワザなくらい警戒心が相当強いシロハラクイナだけに、その姿を記録するチャンスなど皆無に等しい。
ただ旧我が家時代に一度だけ、庭で飼っていたチャボ小屋に、何を血迷ったかシロハラクイナが突入したことがあった(冒頭の写真)。
画像ではきれいなクチバシも長い足先も隠れてしまっているけれど、シロハラクイナが「白腹」であることがよくわかる、個人的に貴重な記録写真ではある。
ところでこの時のシロハラクイナ、チャボたちは日中庭で放し飼いにしていたから小屋の戸は開けっ放しで、出入りは自在だったはずなのに、戸が開いている小屋から出られず困っているように見えた。
なので小屋から出してやろうと近寄ると…
…とてつもない勢いで小屋内を逃げ回ってしまった。
その後ようやく出入り口に気づき、無事に小屋からダッシュで出ていったこのシロハラクイナ、なんでわざわざ小屋に入ってきたのかは不明ながら、おかげでその姿をマジマジと至近距離から拝むことができたのだった。
ここまで至近距離でシロハラクイナを目にしたのはあとにもさきにもこの時かぎりのことで、その後数年経った頃からは姿どころか声すら聴けなくなってしまった。
そのまま長い月日が流れていたから、もう島のシロハラクイナは絶滅してしまったものと思っていた。
ところがコロナ禍になったのが功を奏したのか、再び島内にあの独特の鳴き声が響き渡るようになった。
2022年には、梅雨空の下で憑りつかれたように鳴き続けていたこともある。
朝から夕まで、そして日が暮れてからも夜通しと言っていいくらいに、ずーっと「クヮッ、クヮッ、クヮッ…」と鳴き続けていたのだ。
このテの生き物に興味を持つ島のヒトといえば、リョウセイさんにタツヤさん、そしてナリコさんといったところ。
もちろんながらずっと鳴き続けていることはみなさんご承知で、リョウセイさんに当時伺ったところによると「相手を探し続けているんじゃないか」とのこと。
恋の季節にもかかわらず、パートナーがいないためにヤケクソで鳴き続けていたのだろうか。
異例といっていいくらい四六時中鳴き続けている様子に、ナリコさんは「過労死するはずよ…」と心配(?)していた。
彼が鳴き止む日は来るだろうか…
…と我々も気を揉んでいたところ、それから一週間ほど経つと鳴き声がしてもこれまでのような切羽詰まった感が無く、すぐに鳴き止むようになっていた。
徒労が重なり疲れ果ててしまったのだろうか…
…と思いきや。
我が家の裏の小道をテケテケ歩く、2羽のシロハラクイナの姿をオタマサが確認!
ついに、ついにパートナー獲得!
そのためいつまでも高らかに鳴き続ける必要はなくなったらしい。
それからしばらくは、シロハラクイナがペアで歩いている様子を島内随所でチョコチョコ見かけたのだけれど、残念ながら画像記録には残せず。
一時は絶滅してしまったかと思われた水納島のシロハラクイナ、このままずっと居続けてくれればうれしいところながら、島内の様々な事情が、シロハラクイナの平穏を破ってしまうことは間違いない。
2024年1月現在、ここ半年間では全然声を聴いていないから、再び島から居なくなっているのかもしれない。
ああ、ペアでテケテケ歩くシロハラクイナ、撮っておきたかったなぁ…。