エビカニ倶楽部

ハクセンコマチテッポウエビ

(コマチテッポウエビ?)

体長 20mm

 こと甲殻類に関し、沖縄県内で今や右に出るものなしのエビカニ大家になっているF博士がまだ大学院生だった頃に、彼の著作である「ウミシダに共生するコシオリエビ」という論文を頂戴した。

 それによると、共生しているコシオリエビは、時として宿主のウミシダから離れることがあるという。

 いつも「意地でも離れるものか」としがみついているように見えるのに、彼らは気が向けば散歩もするようだ。

 宿主のウミシダに対してその程度の愛着(?)しかない住人がいる一方で、どう見ても一生ウミシダから離れそうにないものもいる。

 コマチテッポウエビやハクセンコマチテッポウエビだ。

 ちなみに「コマチ」というのは、京都にいるときゃシノブと呼ばれた女と同じくウミシダの昔の通り名で、甲殻類に多いコマチ〇〇というのはウミシダ〇〇と同じ意味と思って間違いない。

 コマチテッポウエビとはすなわち「ウミシダテッポウエビ」と同じ意味で、その依存度はコシオリエビとは少々ワケが違うように見える。

 彼らが暮らしているのはウミシダの真ん中も真ん中、触手の付け根の中央円盤(口盤)だから、触手をかき分けなければまず観られない。

 それもリュウキュウウミシダのように触手の数が少なければまだしも、ハナウミシダのモジャモジャワシャワシャ100本くらい密集している触手をかき分けるなんて絶望的だから、エビカニラバーといえども実際に目にしたことがある人はかなり少ないと思われる。

 逆に言うと、そういうところにいるということを知っていれば、わりと高確率で発見できるともいえる。

 ただしそのためには、ウミシダ自体に相当無理を強いることになるわけで、私がいったいどうやって1人で撮ったかということはご想像に任せるしかない(けっしてウミシダを傷つけてはいないけど、おそらくもう2度と撮らないと思う)。

 そこまでしなければ出会えない、撮れない彼なのに、それが実はコシオリエビのように気が向けばウミシダを離れて散歩をしていたりしたら、ビミョーにショックかも…。

 ところで。

 ここまで書いてきて今さらながらではあるけれど、ハクセンコマチテッポウエビとコマチテッポウエビはどちらもカラーバリエーションがあって、白線がなくてもハクセンだったりしてシロウト目では区別できない。

 ということはすなわち、ここで紹介しているエビがどっちなのかはまったくわからない。

 いずれもハナウミシダにいたものを撮っているから、ひょっとしたらコマチテッポウエビかもしれないこと、ご了承ください。