エビカニ倶楽部

クラゲノミの仲間

体長 5mmほど

 きっとクラゲについているノミみたいな生き物だろうということが容易に想像がつく、なんともわかりやすい名前のクラゲノミ。

 この仲間と初めて出会ったのは、まだフィルムで写真を撮っていた頃だった。

 オワンクラゲについていたもので、水納島ではそうそうお目にかかれるクラゲではないから、普通ならクラゲそのものに興味を持ち、その全体像の写真を撮っておしまいになるところ。

 ところがそのオワンクラゲの傘の内側に、5mmほどの褐色のクリーチャーがついていた。

 まだ変態社会が小さな村ですらなかった時代のこととはいえ、生き物好きとしては黙っていられない。

 とりあえず後刻調べることができるよう、識別可能程度に写真を撮っておいた。

 後日出来上がった写真をよく見ると(当時フィルム現像は出してからひと月以上かかった)、それはどうもヨコエビの仲間のように見えた。

 当時はようやくエビカニ関連も充実してきた頃で、エビカニについてはかなり情報量が増えていたものの、このような生き物にまでまだ変態社会の手は及んではいなかった。

 現在のようにネット上でいくらでも調べられるわけでもなかったから、その正体は当分謎のままだろうと諦めていた。

 ところがその後、変態社会の先駆的変態図鑑を次々に出版しているTBSブリタニカ(当時)のガイドブックシリーズに登場した「クラゲガイドブック」のコラムの中で、まさにこの生物が取り上げられていることを知った!

 クラゲノミという名前を初めて知った瞬間だ。

 それからいよいよ変態社会が帝国化していくにつれ、このクラゲノミですらメジャー化(?)の勢いが。

 けれどこのスモールクリーチャーの世界は広く、形も種類も様々で、ひとくちに「クラゲノミの仲間」といっても、より小さい範囲に絞った「クラゲノミ科の仲間」という意味と、圧倒的多数のグループを含む「クラゲノミ亜目の仲間」という意味では、対象となるクリーチャーの数がまったく異なってくる。

 だからといって、ではどれがクラゲノミ科でどれがクラゲノミ科ではないなんてことが私にわかるはずはなく、とにかくクラゲについているノミのようなスモールクリーチャーはクラゲノミ、ということにするしかないので、ここでいう「クラゲノミの仲間」とは、畢竟「クラゲノミ亜目の仲間」ということになる。

 となるとそこにはトガリズキンウミノミの仲間たちも含まれてくるのだけど、ここらあたりは見るからに区別がついたので(思い込みかもしれないけど)、勢い余って別枠にしてある。

 で、私が勝手に認定しているところのクラゲノミは、その名のとおりクラゲ(やサルパなど)についている小さな小さな虫だ。

 クラゲが漂っているとチェックは欠かさないから、いればその都度発見してはいるものの、これがなかなか撮りづらい。

 クラゲと一緒に漂いながらではただでさえ撮りづらいのに、そのうえクラシカルアイが進んでくると、こんな小さなものがファインダーの中でどうなっているのやらさっぱりわからないときたもんだ。

 かろうじてピントが合っているものを無理矢理トリミングしたのが冒頭の写真。

 ウーム…まさにノミのよう。

 でも体を伸ばした際に尾を観てみると…

 たしかに同じ仲間だけあって、トガリズキンウミノミの仲間の尾に似ている。

 このテの生き物は、このようなヘタレな写真ではその魅力がなかなか伝わらないけれど、高画質で精巧に撮られた画像で観れば、

 まるでエイリアンのような姿は、見る者を魅了する。

 …とは、一部の変態社会人さんの声(@「海の寄生・共生生物図鑑」より)。

 一般社会の人々をも魅了するのかどうかはともかく、たしかに興味深い生き物たちではある。

 上の写真のクリーチャーがクラゲノミ亜目のどの科に属する種類なのかはわからないのに対し、おそらくクラゲノミ科であろうと思われるのが↓こちら。

 クラゲを通してお腹側から観た状態。

 クラゲノミといえば冒頭の写真のような姿形をしたもの、と思い込んでいた頃に出会ったから、尾の感じも目のあたりも違って見えるコイツはてっきり別の生き物なのかと思いきや、プランクトン海中写真のオーソリティ泉ちゃんさんから「クラゲノミでないの?」とご教示をいただいた。

 調べてみるとまさにザ・クラゲノミ科のようで、クラゲノミ・オブ・クラゲノミのグループに属しているようだ。

 ちなみにこのクラゲノミ科の1種は、↓こういう感じで漂っていた。

 水流で崩れ去るタイプのクラゲ(クシクラゲの仲間?)についていた。

 こういう生き物をなるべくなら見たくないという方には地獄の生き物かもしれないけれど、興味津々という方は漂うクラゲを見逃すテはない。

 ただし撮影に夢中になるあまり、途方もないところまで流されてしまわないよう、くれぐれもご注意を…。