水納島の魚たち

フチドリスズメダイ

全長 8cm

 リーフエッジの浅いところで地味に縄張りを主張するこのスズメダイは、注目するとわりと多いことに気づく。

 クロソラスズメダイと同じクロソラスズメダイ属の彼らもまた、縄張り内で自らの食料となる藻類を培養しているスズメダイだ。

 恥ずかしながらワタシは長い間このスズメダイを、セダカスズメダイだと思い込んでいた。

 ところが、変態社会人御用達スズメダイ単独図鑑のセダカスズメダイの項を見てみると、セダカスズメダイの生息域は温帯域をメインとしていて、

 「沖縄では稀」

 と記されている。

 あれ?

 では数多くいるセダカスズメダイみたいな子たちって、いったい誰??

 それはフチドリスズメダイというのだそうだ。

 腹ビレのあたりが青く縁どられるところが、セダカスズメダイとの違いのひとつだそうである。

 それにしてもフチドリスズメダイだなんて、名前の存在すら知らなかったなぁ…。

 セダカスズメダイ同様カラーバリエーションが多少あって、冒頭の写真のように尾ビレ近辺が黄色っぽくなるものもいれば……

 尾ビレの先まで黒っぽいものもいる(でも腹ビレの縁取りはある)。

 彼らの存在が目立つのは岩場のポイントの浅いところで、藻類が育ちやすい岩肌が露出している部分が多いため、フチドリスズメダイは藻類養殖畑の確保に苦労することはないようだ。

 場所には困らないとはいえ「一所懸命」なのはクロソラスズメダイ同様で、闖入者(ワタシのことね)に対しては警戒感を露わにする。

 見ようによっては笑っているようにも見えるその口元、よく見ると……

 咬みつき魔フレッド・ブラッシーもかくやというほどの歯がズラリと並んでいる。

 この凶器にも似た歯で岩肌を整備し、藻類を育てているのだろう。

 とはいえやはり地味地味ジミー。

 その生態は面白そうでも、なかなか一般に注目を浴びる機会は多くはない。

 でも彼らの幼い姿を見れば、イメージはガラリと変わるかもしれない。

 2cmほどのチビターレ。

 ワタシは長い間このチビターレもこれまたセダカスズメダイのチビと思い込んでいたのだけれど、セダカスズメダイのチビには胸ビレ付け根に黒斑が無いらしい。

 ではいったい誰?となったところに容疑者として急浮上したのが、フチドリスズメダイなのだった。

 これがもう少し成長した段階になると…

 濃い部分が増えてくる。これで3cmほどだったはず。

 これくらいになると、オトナの姿と繋がるような気にもなってくる。

 もっとも、チビターレはオトナよりもさらに浅いところ、少しでも波があったらダイバーは体が上下左右にユラユラユサユサされてしまうところにいることが多いので、ボートダイビングをフツーにしていると出会う機会は少ない。

 おだやかな海況の満潮時前後を選べば、可憐な姿を拝めるかもしれない。

 でもやっぱりその歯は……

 ブラッシー。