水納島の魚たち

オハグロハギ

全長 15cm(写真は5cm弱の若魚)

 2019年の夏もそろそろ終わろうかという頃、群れ集うシコクスズメダイに、見慣れないハギの仲間が混じっているのを観たとオタマサがいう。

 図鑑で調べたところ、それはオハグロハギなるニザダイの仲間であるらしい。

 オトナになっても15cmほどのハギで、シコクスズメダイにそっくりな配色をしている。

 オタマサによると、その幼魚が明らかにシコクスズメダイに混じって泳いでいたらしい。

 このシーズンの前に当コーナーにてニザダイの仲間に注目していたにもかかわらず、オハグロハギなる魚の存在にはまったく気がついていなかったワタシ。

 翌日さっそく同じポイントを訪ね、シコクスズメダイの群れに注目してみることにした。

 すると……

 いた。

 5cmほどの幼魚5〜6匹が、たしかにシコクスズメダイたちと一緒に泳いでいるではないか。

 念のために言っておくと、写真の上側がオハグロハギで、下側がシコクスズメダイ。

 こうして静止画像で観比べれば違いは一目瞭然ながら、ヒラヒラ舞い踊るスズメダイたちに混じっていると、まったく目立たない。

 これはオハグロハギにとって何か利のある擬態なのか、それともたまたまなのか。

 単体でいればただ地味なだけのハギだけど、そっくりな体色のシコクスズメダイと混泳していると、生態的には「おお……」と一目置かれる存在になれそう。

 それはともかく、図鑑を観てもネット上で紹介されているオハグロハギの解説を観ても、幼魚がシコクスズメダイと混泳しているなんてことはどこにも書かれていない。

 これまで我々はずっと、そこにいるのに気がついていなかったのか、それとも今夏に限り特異的に紛れ込んでいるのか……。

 いずれにしても恥ずかしながら、これまでまったくその存在を知らなかったワタシです。

 これまで何度も何度も何度も潜っている場所だというのに、25年目にしてさえ初めて気づくことがある。

 これだからダイビングはやめられない。  

 追記(2020年4月)

 人生初のオハグロハギ認識は、2019年の9月初めのことだった。

 その頃はシコクスズメダイとサイズも色味もそっくりだったオハグロハギは、それからひと月経った頃に同じ場所を訪れてみると一回り以上成長していて、色味も幾分淡くなっていた。

 行動範囲も広がっており、もうシコクスズメダイと一緒にいる意味は無くなっているようだ。

 ワタシが近寄ると、一応警戒して岩肌近くまで避難してくる。

 すると体色は小さかった頃のように黒くはなるんだけれど、たまたまそばにいたシコクスズメダイと比べてみると……

 先に紹介したひと月前の写真同様、シコクスズメダイはオハグロハギの手前にいるのに、オハグロハギのほうが大きく見える。

 そしてさらにひと月後には…

 イッチョ前に随分ハギっぽくなっていた。

 毎年こういうパターンなのだとすれば、オハグロハギがシコクスズメダイと一緒に泳いでいるところが観られるチャンスは、夏から秋の初めということになるようだ。

 追記(2022年12月)

 よく潜る砂地のポイントに比べると訪れる頻度はけっして高くないものの、オハグロハギを初認識をした翌年以降現在(2022年12月)に至るまで、オハグロハギに出会った記憶が無い。

 ひょっとすると2020年、2021年の両年はガイド中に目にしてはいても撮っていないだけかもしれないけれど、少なくとも今年は一度も観ていないのは間違いない。

 2019年の初認識までずっと気づかずにいたのは、単にそれまでいなかっただけ?

 追記(2023年10月)

 今夏(2023年)、初認識以来4年ぶりにオハグロハギと遭遇した。

 やはりシコクスズメダイも群れているところに2匹だけいて、その後少なくとも1ヵ月以上同じ場所で確認できた。

 あらためて落ち着いて観てみると、体の濃淡は自在に素早く変化させることができるようで、少なくとも若魚の間は、シコクスズメダイのような黒ともう少し淡い色を、ケースバイケースで使い分けているらしい。