水納島の魚たち

ヨロンスズメダイ

10cm(写真は5cmほど)

 ひと昔前までは「アイランドグレゴリー」という英名が通称になっていたヨロンスズメダイ。

 他にも〇〇グレゴリーと呼ばれる海外産の種類がいるのは、「グレゴリー」が英語圏におけるクロソラスズメダイ属のスズメダイたちの通称のひとつだから。

 10年前(2012年)にめでたく和名がついたようなのだけど、だからといってそれまで誰も知らなかったわけではなく、わりと日本各地で観察されていたようだ(名前に「与論」とあるのは、和名記載のもととなった標本の採集地が与論島という程度の意味だろうと思われる)。

 どうやら水納島も、その「日本各地」に含まれていたらしい。

 それまでずっとセダカスズメダイだと思い込んでいたものがほぼほぼすべてフチドリスズメダイだったことに衝撃を受け、その後しばらくリーフ上の地味地味ジミーにも目を向けて撮っていたのは一昨年(2020年)のこと。

 リーフ上の浅いところを好むこのテのスズメダイたちのオトナはどれもこれもそっくりかつ地味地味ジミーだから、こういうことでもないかぎりわざわざ撮ろうという気にならない(※個人の感想です)。

 そういう意味ではいいきっかけではあった。

 おかげで、リーフ上の地味地味ジミーのなかに、このヨロンスズメダイも混じっていたことに気がついた。

 写真を撮ってから2年後のことだけど…。

 撮っている時にはフチドリスズメダイだと思い込んでいたこのヨロンスズメダイ、いったいどこがフチドリスズメダイ(やその他同属の魚)と違うのかというと…

 その1……尻ビレを縁取る黒い帯模様。

 その2……黄色い虹彩。

 その3……オトナにも背ビレに模様がある(写真は広げていないからわかりづらいけど)。

 以上を踏まえ、あらためてフチドリスズメダイと見比べてみると…

 ぜ〜んぜん違って見える!

 …でしょ?

 もっとも、ヨロンであれフチドリであれ、オトナが地味地味ジミーであることに変わりはなし。

 オトナに比べれば遥かに可憐なチビターレもまたフチドリスズメダイと似ているものの、これは我々シロウト目でも両者の違いは明らかだ。

 といいつつそれは図鑑で見て知っているだけで、いまだに実際に目にしたことはない。

 迷うことなくカメラを向けたくなる可憐さを誇るチビターレ、おそらく居場所は、普段のボートダイビングとは無縁のターボスネイル生息密度調査ゾーンあたりなのだろうなぁ…。

 さっそく追記

 このヨロンスズメダイを発見(?)した過去写真というのは、昨年までのものだった。

 その後なんの気なしに今年(2022年)撮った写真を振り返っていたところ、なんとも驚いたことに3月に撮った写真のなかに、ヨロンスズメダイの写真があった。

 そっちのほうがよく撮れていたので、冒頭の写真を差し替えた次第。

 今年はもう特にリーフエッジ付近の地味地味ジミーを追い求めていたわけではないのに、なんで撮ってたんだろう?

 しかも場所は、砂地のポイントのリーフ上だ。

 たしか、「なんか違って見える気がする…」と思って撮った記憶がある。

 うーん、本能的にちゃんと撮っているだなんて、なんてすごいんだ、オレ。

 < スゴイのなら目にした時点で種類がわかるのでは?

 まったく同じ場所でひと月後にも撮っていて、同じ個体なのかどうかは不明ながら、色味が随分変わっていた。

 背ビレのマークのことなどまったく気に留めていなかったから、背ビレを閉じている様子しか撮っていないんだけど、尻ビレの黒帯模様は紛うかたなきヨロンスズメダイの印。

 この場所に行けば他にもポコポコいるのか、それともやはり少ないのか、いまいちどサーチしに行かねば…。

 追記(2023年2月)

 その「いまいちどサーチ」を今年(2023年)2月に実施したところ…

 …背ビレ後端が傷んではいるけれど、健在。

 やはり周辺にはこの1匹しかいないんだろうか…

 …と思いきや。

 …確認できただけで、他にも3〜4匹いた。

 なんだ、フツーにいるんじゃん、ヨロン…。

 本来は岩場のポイントのリーフエッジ付近が好みの暮らしの場だと思っていたのに、こんな砂地のポイントのリーフエッジにポコポコいるものだったのか。

 それともここだけ特異的に?

 他の場所ではどうなのか、引き続きヨロン調査を続けねばなるまい。