全長 10cm
テンジクダイの仲間には、明るいところを嫌う種類がけっこう多く、明るいサンゴ礁の海で明るいところがキライなんてことになると、畢竟居場所は昼なお暗い岩陰や穴蔵の奥ということになる。
岩陰にいても顔を外に向けてくれていれば撮ろうという気にもなるところ、岩陰でなおかつ奥を向いていると、尾ビレだけ撮ってもどうしようもないから、よほどのレアものでもないかぎり、フツーにスルー案件になる。
そういう奥向き(?)の種類は、いつ見かけても奥を向いているものなのだけど、6月(2026年)のある日オタマサがリーフエッジ下で見かけた子は、どういうわけかわりと外に出ていて、なんとか横からその姿を見せてくれた。
リーフ下の暗がりの奥で個室暮らしをしているタイプなんだけど、この日はたまたまちょい外に出ていたおかげで、当サイト初登場。
パッと見はヒトスジイシモチだけど、そのパッと見に騙されてはいけない。
ちなみにヒトスジイシモチはこういう魚。
瓜二つを通り越して瓜ひとつ級にそっくりながら、よく観ると両者の尾ビレの付け根にある、黒点の位置が微妙に異なっている。
左がヒトスジイシモチで、右が今回の初登場君。
ご覧のとおり、ヒトスジイシモチの黒点は体のラインの延長上にあるのに対し、初登場君ではラインの延長上よりもちょい上に黒点があるのだ。
もちろんのことオタマサはそんなことに気づくはずはなく、ただただ普段は奥にいるのにこの日は珍しく外(といっても狭いところだけど)にいるなぁ…と思って撮っただけらしい
その点慧眼なるワタシは、オタマサに写真を見せてもらうやすぐさま黒点の位置の違いに気づき、ヒトスジイシモチに似ているけど黒点の位置が異なるヤツだ、ということには気がついたんだけど…
えーと…誰だったっけ?
肝心の名前を忘れてしまった。
たとえ慧眼であっても知識は浅薄なワタシのこと、以前は名前を知っていたという記憶だけはかろうじて残っていたから、調べればすぐにわかるだろうとさっそくネット上で調べてみたところ、その答えを過去のワタシ自身が教えてくれた。
当お魚コーナーのヒトスジイシモチの稿の末尾で、<参考>としてこの魚の存在を紹介していたのだ。
知識浅薄なれど、将来自分自身に役に立つよう<参考>として書き残しておくあたりやっぱり慧眼なワタシが述べているところによると、この魚はユカタイシモチという種類だった。
けっして珍しい種類というわけではないものの、ずっと目にしたことが無かった幻のユカタイシモチを、鼻歌混じりに「フフフ…フン?」とばかりに軽く撮っただけのオタマサに、あっさり先を越されてしまうとは。
慧眼かつ節穴という複雑な構造は、むしろ複眼というべきか…。
後日オタマサは、再びユカタイシモチに出会った。
場所は桟橋脇の岩陰で、水深にして大潮の満潮時でもせいぜい水深2mほどでしかない。
しかも岩陰といっても奥に顔を向けて定位できるようなスペースがないから、横向きでその姿を拝める。
こういう浅いところでもフツーに暮らしているのだなぁ、ユカタイシモチ。
にもかかわらず、これまで気づかなかったのはなぜか。
< 節穴だからさ。