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ゆんたく!島暮らし

写真・文/植田正恵

280回.海水浴客の減少

月刊アクアネット2026年9月号

 夏休みシーズンも終盤となり、だんだんと秋の気配が濃厚になってきた。

 夏休みシーズン、それもお盆期間は一年で最も忙しい時期だけに、ビーチで営業している各業者のスタッフたちも、お盆を乗り切ってようやくひと山越えた感が漂っている。

 閑散期には1日3往復の連絡船は、春から4往復、7月になると6往復、そして7月20日から8月一杯は1日8往復になる。コロナ禍以前の夏休み期間は1日11往復も運航していて、そのどれもが満席という異常事態で、あまりの混雑ぶりにビーチから島内へ避難してくる高齢者もいたほどだった。

 日帰り海水浴客が夏休みにそれほどの活況を見せていたのも今は昔、コロナ禍後に1日8往復になったのは、11往復するほどの需要が無くなったからにほかならない。

 今年など日によっては最終便がスカスカなこともあるほどで、連絡船の船員さんによると、乗船客の5割はインバウンド客だという。日本人客にかぎっていえば、激減も激減だ。

 さらに驚くべきことに那覇から足を延ばしやすい人気の離島では、フェリー乗船客の9割が外国人で、船に乗った途端どこの国にいるのかわからなくなるほどだという。沖縄県はいったいどこを目指しているのだろう…。

 水納島の場合は外国人客の多さもあって海水浴客が減少している様子はさほど目立たないものの、日本各地の海水浴場の統計によると、70年代をピークに海水浴客は減少の一途をたどっており、なんと現在はピーク時の9割減なのだとか。

 9割減なんていったら野生動物なら絶滅に等しく、ただちにレッドデータブックのリストに載るところだ。

「さすがに夏休みともなると今年も島のビーチは大賑わいになってはいるけれど、やはりコロナ禍以前と比べると、夏真っ盛りでもパラソルの数はかなり減少しているように見える。しかもその半数は外国人客というのだから、日本人に限っていえば激減と言っても過言ではない。今や日本人海水浴客は、絶滅危惧種になっているのだ。」

 コロナ禍以後の諸式高騰が拍車をかけてはいても、それ以前からずっと減少傾向だったということは、物価高だけが海水浴客減少の直接的な原因ではなさそうだ。

 そもそも少子化で「家族で海水浴」が可能な母数が減っているのだから、海水浴客が減るのも当たり前なのだろう。日本における海水浴は太陽ラブな欧州の皆さんの習慣をマネするようになって始まったもので、それほど歴史があるわけでもない。マネから始まった流行が、そろそろ終わりを迎えている、というだけのことなのかもしれない。

 自分の子供のころを振り返ってみると、年に一度は家族で、もしくは友人や親せきの家族とともに海水浴に行っていた。

 海無し県埼玉で暮らしていた私でさえ、夏といえば海、砂まみれになりながら波と戯れ、奇妙奇天烈な生き物を追い求めることができた非日常世界をこよなく愛していたものだった。

 でも普段からこれでもかというほどのバリアフリー生活をしている現代の子供たちにとっては、砂ジャリジャリ、しょっぱい海水は乾き始めるとベトベト、常に熱中症の危険がつきまとう日差しギラギラ、日焼けは将来的に危険…といったバリアだらけの過酷な(?)海辺の環境など、非日常世界というよりは非常識世界なのだろう。

 我が子をそんな目に遭わせたくないという親も多かったりして…。

 そんな諸々を考え合わせると、水納島の海水浴客がひところより減少しているのは、どうやら全国的な傾向でいたしかたないことのようだ。

 地域経済的にけっしてバカにならない海水浴場は、今や真夏に冬の時代を迎えているのかもしれない。でもここだけの話、さらに減少してくれたほうが、島に越してきた当時ののんびりした水納島に戻って素敵かも…と思ってしまう自分がいるのだった。