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ゆんたく!島暮らし

写真・文/植田正恵

87回.婦人部VS.ハブ

月刊アクアネット2010年8月号

 梅雨の間のある日のこと。

 水納班婦人部ほぼ総出で、朝の8時から作業が開始された。30代1名、40代2名、50代4名、70代以上5名の計12名からなる島内最強(?)部隊だ。

 梅雨どきということもあって、曇り空という絶好の屋外作業日和。現場は島内幹線道路脇の藪の中。

 まず3名のノコギリ部隊が前線を切り開いてゆき、残りの9名が鎌とレーキできれいにしてゆく。

 そして約2時間後には、全長30m幅2mほどのケモノ道のようなものが出来上がった。

 そもそもコトの発端はハブである。

 3月半ば頃、小中学校の周囲でたてつづけにハブの目撃例があったのだ。

 その後も島内各地で目撃談が相次ぎ、そして5月上旬には島の最高齢のアイドル犬(?)がハブにやられて最期を迎えてしまった。

 その直後に、その犬を飼っていた家の敷地内でハブが捕獲されたほか、別の家の敷地内にハブが入っていく姿が目撃されたり、早朝に畑の脇であわやハブにかまれそうになった島民もいた。

 湿度に満ちた生暖かい風が吹く梅雨時はハブが活発になるものだとはいえ、今年はあまりにも目撃例が多すぎる。

 このままではいずれ観光客に被害が出てしまうかもしれない。

 これはなんとかしなければ!!

 ……というわけで婦人部は立ち上がった。

 今の世の中、なんでもかんでもすぐさま行政に頼るようになっているけれど、自分たちでやれることは自分たちでやろう、というのが離島に住む人々の心意気。

 婦人部がハブ対策に乗り出さないはずはない。

 その作業の翌日、婦人部総がかりで作ったそのケモノ道に、現在使われていない漁網が張られた(なぜかこちらは青年部担当、作業の担当が逆のような?)。

 その昔、ハブよけのために垣根に張っていた漁網に、ハブが絡まってそのまま死亡していたことがよくあったらしい。これを島内二カ所に設置し、都合60mくらいのハブ罠が出来た。

 このハブ罠大作戦の概要を聞いたとき、網を張るのはともかく、ケモノ道を作るには一週間はかかるだろうと私は見積もっていた。

 なにしろ現場はものすごい藪で、どう見ても重機が必要そうなところを、か弱く(?)高齢な婦人部で切り開こうというのだから。

 ところが実際に作業が始まると、2日間計3時間程で終了してしまった。

 婦人部パワー、おそるべし。

 はたしてこのハブ罠は効果的なのかどうか、実際のところはよくわからない。試しに数日後見に行ってみたら、網に絡まっていたのはオカガニばかりだったというオチもある。

 でも、1人ではどうにもならないことでも、皆で力を合わせるとこんな大掛かりなことがあっという間に出来るのだなあと、いまさらながら感動した。

 たとえ結果は思ったとおりではなくても、なんだかひとつのことをやり遂げた充実感が心地よく漂う。

 その後、行政の協力を得て確保された小型のタッパに毛が生えた程度のハブ罠が、我が家を含めて島内各所にいくつか設置されたところ、もののひと月ほどの間に次々とハブが捕獲された。

 ハブの多さが証明されたことはもちろん、ハブ罠にはまったのは、漁網製ハブ罠によって退路を断たれたハブたちかもしれない。

 「やってよかったさあ」という婦人部の面々は、なんだか少し誇らしげなのだった。