11・人生上々日の出劇場 そして翌日……。 宿は島の東側にあるので、夕陽を見られないかわりに、日の出は宿にいながらにしてたっぷりと見ることができるのだ。 その点ここだったら、見渡す限りなんの障害物もない。 そう決めた。 前夜人一倍酔っ払っていた僕。はたして姫との約束どおり起きることができるのか? 鈍器で後頭部を殴られたかのような睡眠からパチッと目覚めたとき、すかさず時計を見ると…… 5時45分!! 俺ってすごい!! 「ムニャ?起きたの?すごいねぇ……ムニャ。」 どうやら起きる気はないらしい…。 さすがにけっこう疲れていたろうから、姫も起きてはいないだろうなぁ……。 お!起きてたの!? 「うん…。」 起きててくれたというヨロコビを素直に表せないまま、「起きたばかりで目腫れてないか??」とからかうと、 「随分前から起きてたから大丈夫だよ」 聞けば、3時半ごろに目が開いてからずっと起きたままなのだという。横になって海風に当たりながら夜の海を見ていたのだそうだ。 念のためにもう一度うちの奥さんを覗きに行くと、まだカエルのポーズをしつつ、 「いってるぁっしゃはぁい…ムニャ」 どうやら気を利かせて二人きりにしてくれるらしい。 よし、じゃあ行こうぜ、姫! ひっそりと静まり返った宿から出ると、東の空にはうっすらと黎明の兆しが。 さて。 歩いてみることにした。 ………おいおい、なんだかドラマの1シーンみたいじゃないか。 残念ながら、見事に起きたとはいってもまだ酒の匂いを周囲にぷんぷん撒き散らしているおっさん相手では、いかに状況がロマンチックでもそんな話になるはずはない。 姫が二十歳になったら、いつかどこかでお酒を飲もう!という約束を一方的に彼女としてあるのだが、 「やっぱやめよっかなぁ……」 うーむ……。 「酔っ払った植田さんは傍から見てる分には楽しいけど、関係者になるとウザイ」 ああ……。 そうこうするうちに、随分歩いてきてしまった。 朝焼けの空が徐々に赤く色づきはじめてきた。 撮影:ナァナ 白々と開けていく東の空。 「ホントだ!!」 姫も曙光に色づく雲を写真に収める。 昨夜防波堤の上で寝転んでいたときも人生上々って感じだったけど、今この時この瞬間も、オッチャンはジンセイのヨロコビに満ちていた。 ところで、日の出。 あれ?? 「ここまで歩いてこなくてもよかったんじゃんッ!!」 またしても姫に怒られる僕。 そろそろ潮が満ちてくるので、この岩場にいられる限界が近づいてきた。 テクテク来た道を引き返すと、案の定だった。 あの木々が見えるところの向こう側まで行っていた我々……。 まあ、なにはともあれ、今日もいいお天気でよかったよかった!! 宿に戻ると、さすがにうちの奥さんは起きていた。 姫によると、昨夜はリョウ君も興奮冷めやらぬままなかなか寝付けなかったそうで、寝たのは1時半ごろじゃないかということだった。 そうやって遊んでいると、洗顔を終えたうちの奥さんが顔を出し、 「散歩してくるね」 と言って去っていった。 ちょっと遅れて外に出てみると、うちの奥さんも海辺の道を歩いていた。 人生は上々だ! |