12・伊平屋中学女子卓球部道場破り

 さて、我々はいったい伊平屋まで何をしに来たのであるか。
 たった一泊の旅行というのに、これまでに11ページも費やしてしまったから、多くの読者はそれをお忘れになっているやも知れぬ。
 だから改めて言おう。
 卓球をしに来たのだ!!

 ようやく今回の旅の目的に到達した……。

 相手は伊平屋中学女子卓球部。
 チカ先生が副顧問をしている部である。
 この日は日曜日というのに、我々のために卓球をしに来てくれるという。
 しかし。
 さすがに日曜日ということもあって、せいぜい来られるのは2年生のうち4名ほどじゃないかなぁ、とチカ先生は言っていた。
 チカ先生もこのところはずっと、中学校内で期間限定で結成される駅伝部の活動に精を出していたので、全然卓球部のほうには顔を出していなかったらしい。
 さらに聞いてみると、卓球部もこのところいろいろと学校の行事やなにやらが重なって、部活はしていない期間が続いているという。

 うーん。
 自慢じゃないが、姫の実力は国頭地区ではダントツ1位なのである。
 伊平屋中学のみなさんはといえば、残念ながらそこまではいっていない。
 でも、普段リョウ君やオチアイ、僕、そしてたまにマサノブといった、限られた人としかやっていない彼女にとって、普段やったことがない選手と試合をするというのはいい経験になるだろう。
 そう思っていた。
 が、4名、しかもブランクありとなれば、もはや姫の敵ではないなぁ。
 これはひょっとしてリョウ君のための練習試合かな?
 コーチ・オチアイとしては、いささか物足りないようだった。
 まぁ、今さらそういっても仕方がない。
 日曜日にこうして我々に付き合ってくれる生徒がいてくれるだけでもありがたいじゃないか。

 ホテルにしえで豪華な朝食を終え、集合時間の9時に合わせて我々は宿をあとにした。
 会場は、伊平屋中学のすぐ近くにある村民体育館ということだった。
 水納島に毛が生えた程度の……というにはあまりにも開きがありすぎるけど、とにかく同じ離島なのに、やはりひとつの島がひとつの市町村だとこうまで違うのか、ということを痛切に感じる。
 村民体育館、村民プール、村民グランド……
 どれもこれもものすごく広く立派な施設なのだ。
 村民プールってあなた、海で泳げばいいじゃんッ
 ……っと思わず言ってしまいたくなるけれど、そりゃ学校にプールがないんだもの、島にひとつプールがあったっていいよなぁ。

 さて、その村民体育館に一足早く到着した我々。
 本当にこの場所であっているのか、誰も自信をもって答えられないなか、チカ先生がやってくるのを待っていた。
 すると……。
 姫の様子がおかしい。

 「なんか船酔いしているような感じで気持ち悪い……」

 ひょ、ひょっとして、日の出劇場の散歩が長すぎた!?

 「まったく余計なことさせるから……」

 コーチにしかられる僕。
 そんなこと言ったって……。
 あ、そうか、もしかしてアルコールを体から発しまくっている僕の近くにずっといたから、それで酔ってしまったのか??

 とにかくエースがそんな調子だと大変だ。
 大丈夫か、姫??

 「わかんない……倒れるかも。」

 おいおい……。
 ちょっと心配。

 鍵がかかっているので玄関先で待っていたのだけれど、隣にある広々とした村民グランドのトラックを一周してみた。
 普段水納小中学校のグランドを見慣れていると、200mトラックが異常なほど広く感じられる。
 傍らにある100mの直線なんて、地平線の彼方まで続いているのかと思えたほどだ。
 この齢になった僕が今目一杯100mをダッシュしたら、いったい何秒くらいで走れるんだろう?

 先だっての中体連陸上大会では、姫は100m走の部に出場していた。
 だから、彼女が元気でさえいてくれれば、今この場で対決したんだがなぁ。
 そんなことするとまたコーチに怒られそうだけど……。

 生徒たちもチラホラ揃い始めている。
 そうこうするうちにチカ先生がやってきた。
 この体育館の鍵を持って。

 さあ、先生、開けて!

 ガチャ、ガチャ

 「あれ?」

 ガチャガチャガチャ…

 「あれ??」

 ガチャガチャガチャガチャガチャ……

 「あれ〜??」

 あれ〜って先生、開かないの?

 「開かない…」

 ここは一人でやるよりも三人寄れば文殊の知恵、みんなであーでもないこーでもないとやっていると……

 やっぱり開かない!!
 鍵は合っているのだけれど、大事な部分が膠着してしまっているのか、ビクともしないのだ。

 「いつもここ鍵なんてかかってないんですけどねぇ…」

 ってことは、鍵を使うの初めてなの?チカ先生……。
 というか、おいおいおい、事ここに至って「入れない」ってオチで終了か?

 さすがにこのままではピンチなので、ちょっと建物の周囲を探ってみた。
 すると、倉庫の入り口みたいな扉があって、その鍵の仕組みは玄関の鍵と同じものだった。
 ひょっとして、ここから入れば内側から玄関に行けるのでは?? 

 伊平屋中の女の子たちに訊いてみた。
 「ここって倉庫になってるだけ?内側で体育館と繋がってない?」

 「え?どうだったっけ………繋がってないかな…あ、多分繋がってますよ」

 よし!鍵を…………
 あれ?合わないや。
 くそー、せっかくのチャンスだったのに!!

 と思ったら、その倉庫の窓の鍵はかかっていなかった。ガラリと開いたのだ。
 よしコーチ、俺の背を踏み台にして中に入るのだ!

 雲霧仁左衛門一味のようなことをして倉庫に侵入するオチアイ。
 そして………

 あった!中に通じるドアが!!

 こうしてやっとの思いで体育館に入れたのだった。
 なんで体育館に入るだけでこんなに文字数を使わねばならんのだ…。

 てゆーか、せっかく玄関の鍵をかけていても倉庫から侵入できるんじゃ意味ないじゃんッ!!>管理責任者。(その後、あとから来た生徒さんは、難なく鍵を使って玄関の開かずの扉を開けた)。

 さあ、いよいよ卓球だ!!
 なんと驚いたことに、参加者は当初4名と伝え聞いていた生徒さんは、1年生も2年生も、すでに引退している3年生も来てくれて、選手は総勢9名を数えた。
 ありがたい……。
 せっかくの日曜なのに、みんなありがとう!!

 ところで。
 ここに一人そわそわしている人がいた。
 オタマサではない。リョウ君である。
 というのも、彼は今回のこの練習試合をするに際し、来てくれるという4名のおねーさんたちへのプレゼントとして、彼が経営する「小さな貝殻やさん」の素敵なシャコガイキャンドルを用意してきていたのだ。
 で、玄関で待っているときから、

 「ねぇねぇ、あれ渡そう!」

 「あとでいいよ」

 という会話を繰り返していた。
 そこへもってきて、当初4名と聞いていた相手の選手が、実は9名にものぼることが判明。
 リョウ君は一人でピンチを感じていた。

 「どうしよう、足りないよ!」

 「大丈夫」

 そういう会話も何度も繰り返していた。
 体育館に入るやいなや、

 「あれどこに置いたっけ?」

 とリョウ君はシャコガイキャンドルが入った袋を気にする。

 「まだいいってば」

 僕らも手土産代わりに菓子折りを持ってきていたので、最後にみんなに渡そうと思っていたから、卓球が終わってからでいいよ、と口を酸っぱくしてリョウ君に言うんだけど、

 「渡そう!」

 「だからあとでいいってば!」

 いったい何度繰り返したろうか。

 一方、体調不良を訴えていた姫は……?
 まだ不完全なようだった。
 卓球台をセッティングする間は、君は休んでいなさい。

 やがて準備完了。
 坂の下にある中学校の部室から、ラケットやネットなど必要な備品を何度も往復して生徒さんたちが取ってきてくれた。
 ありがとう。

 いよいよ卓球のお時間だ!
 さて、どうやってやりましょうかねぇ?最初に練習してから?
 チカ先生がコーチオチアイに訊ねる。

 「いえ、うちらはぶっつけ本番でやります」

 そうなのである。
 大会会場では、いつも練習なしで本番を迎える。
 まがりなりにも練習試合という名目である以上、コーチとしては本番を想定したいということなのだ。
 もっとも、ブランクがあるという伊平屋中の子たちには、軽く打ち合いをしておいてもらった。
 4台並んだ卓球台の随所から、

 「あれ?」
 「あら?」

 という声が聞こえてくる。
 ブランクがあるから手元が狂うのだろう。

 練習試合は、まず伊平屋中の選手から4名+1組を選抜してもらって、上手な順に並べてもらい、それをオチアイがうまく振り分けるんだかなんだか、そういうことにした。
 時間はたっぷりあるから、その後何試合もできる。
 で、各個人戦プラスリョウ君&ナァナのダブルスも、ってことで練習試合は始まった。

 言うまでもないが、僕ら夫婦も出場するのである。
 コーチオチアイが生徒さんたちにいう。

 「このおじさんおばさんたちも出ますが、彼らはヘタクソですから、思う存分やっつけてやって結構です」

 うぬぬぬ……。
 といいつつ、コーチオチアイは、僕らにはこう言っていた。
 「ちゃんと真剣にキッチリやるように」
 うむ。全力を出し切ろう!

 さあ、各コートに分かれて試合が始まった。
 姫はもちろん順当勝ち。
 リョウ君も勝利。
 姫とリョウ君のダブルスも勝利。
 オタマサは当然ながら敗退。
 そして僕は?

 勝利!!
 イェ〜イ!!

 やるじゃん、俺!!
 もっと緊張するかと思っていたけど、かなりリラックスしてたなぁ。ほどよく酒が残っていたからかな??

 リラックスといえば、始まる前まで今にも倒れそうな様子だった姫は、戦闘開始と同時に先ほどまでのグッタリモードはどこ吹く風、動けば動くほど調子がよくなっていくようだった。
 もしかして、姫、緊張してたんじゃないの??
 あ、二日酔いの僕が発散していたアルコールを吸収してしまったものの、運動したことによって抜けたってこと??
 いずれにしても、早々の復活でよかったよかった。

 さあ、2とおり目の対戦。
 実力差があることを見切ったコーチは、ここから先は姫に対してだけハンディをつけた。
 相手のフォア側にしか返してはいけない。
 普段僕相手にやっている限定ルール・その1でやれというわけだ。ただし相手にはそれを伝えない。
 そんなハンディキャップマッチにもかかわらず、姫はやはり順当勝ち。


華麗なフォームで相手を圧倒する姫

 リョウ君も勝利。
 小学4年生がなんで?と皆さんはお思いになるかもしれない。
 しかし彼のサーブを百パーセントレシーブできる人は、おそらく国頭地区の中学生でもそうそういないだろう。
 うまいのだ、彼は。

 ではオタマサは?
 それなりに対戦相手のレベルを合わせてもらっていることもあってか、なんとオタマサも勝利!!
 かくいう僕は、2年生のアヤカ部長さんと対戦したのだが……… 

 勝利!!

 なんだ、メチャクチャ強いじゃん、俺ら。

 このままでは僕が図に乗ると思ったヤツがいた。
 コーチオチアイである。
 なんとか僕にギャフンと言わせなければ、この先何かと勘違いするにちがいない……そう思ったに違いない。<実際そうだけど。

 で、第三の刺客が送り込まれてきた。
 その後の試合でナァナ姫が唯一1セット取られた相手、ミサキちゃんである。
 うむむ…さすが、サーブが一味違う。
 でも僕は普段コーチや姫、リョウ君といったヘンテコリンな(つまり上手い)サーブで鍛えられているのだ、ゲーム中になんとか対応できるようになってきた。

 そうやって奮闘しているときに、コーチが一言。

 「このおじさんに勝ったらダイビングただでさせてもらえるよ!」

 またコイツ余計なことを……。
 それは姫に勝った人には、ってことでみんなに言おうかって話だったじゃないか!

 「え?ダイビングって空の?」

 ちょっと興味を引かれたミサキちゃん。 

 「ううん、海の。俺ら、水納島でダイビングサービスやってるんだよ」

 と事情を説明すると、

 「父ちゃんウミンチュなんで、普段からやってます!(笑)」

 おお……!!
 さすが伊平屋島、ダイビングが餌にならない……
()
 このセリフがなんだか妙に新鮮で、とても気に入ってしまった。

 ……という会話を途中途中で交わしつつ、セットカウント1−1で迎えたファイナルセット。はたして結果は??

 僕の勝利!!
 イェ〜イ、3連勝!!
 コーチオチアイの目論見をまたしても打破したのだった。
 この試合を傍で見ていてくれた姫は、勝って気分よくしている僕に

 「切れてるサーブに対するのと、切れてないサーブに対するのと、レシーブの仕方が逆だよ」

 あれ?そうなの?
 …そう言われてもまだいまいちよくわかんないんだけど……。
 でも、さすが我が卓球師匠、さりげないアドバイスありがとうございます。
 そういや、僕が卓球を始めたばかりの5月6月頃は、いつもそうして優しく教えてくれていたのになぁ……。
 久しぶりに師匠の教えを受け、わかんないながらもなんだかちょっとうれしい僕なのだった。

 さあ、3とおり目の対戦。
 姫はもちろん順当勝ち。
 リョウ君も勝った。
 なんとオタマサまで連勝!!
 そして4戦目となる僕の相手は、引退している3年生サオリちゃんである。
 もちろん、コーチオチアイが僕をギャフンといわせるために送り込んできた第四の刺客だ。

 さすがに僕もここまでくると負けるだろうと思っていたので、とにかく全力を出し切ろうと開き直り、動きはいつになくスムーズになっていった。
 2セット終了時点でセットカウント1−1。さあ、ファイナルセットの結果は……?

 僕の勝利!!
 4連勝!!
 いやあ、さすがにここまでくるとなんだか申し訳ないような気もしてくるのだけれど、残念ながらプレー中は夢中になっているのでどうしようもない。
 コーチオチアイも、よもやの展開にもはやなす術なし。

 夢中といえば…。
 ここに、普段からは想像もできない「アイ・オブ・ザ・タイガー」になっているヤツがいた。
 リョウ君である。
 シーズン中だったこともあって、これまではリョウ君の練習を見る機会が少なかったうちの奥さんが、

 「リョウ君があんなに真面目な顔しているのを初めて見た!」

 と、しきりに感心していたくらいなのだ。


虎の目になって自慢のサーブを打つリョウ君

 普段の練習のときでも、たまに獲物を狙う虎の目になることはあるのだけれど、いかんせん小学4年生である、その集中力が長続きしない。
 ところがこの日、彼は計6試合したというのに、その集中力はついに途切れることが無かった。
 彼にとって、かなり意義のある時間だったに違いない。
 ところで、このリョウ君がプレーしているときのこと。
 傍らで女の子がなにやら話していたのを耳ざとく聞いていたオチアイによると、彼女たちは、

 「ねぇねぇ、あの子、水納中のあの子に似てない?ほらほら、えーと……そう、ミクニ君!」

 なんと!
 み〜く、リョウ君にどことなく似ているといわれて不本意かどうかはともかく、君の名は伊平屋中学で轟いていたぞ!!
 ちょっとクヤシイ……。<なんで?

 さて、第四の刺客として送り込まれながらも、僕に返り討ちに遭ってしまったサオリちゃん。よほど悔しかったのだろう、休憩を挟んでいるとき、

 「もう一回やりましょう!」

 リターンマッチを申し込んできた。
 うん、僕はそういう負けず嫌い的闘志を燃やす子が大好きだ。
 いいぞ、オッチャンはいつ何時、誰の挑戦をも受ける。手は抜かないぜ!!

 そうして4とおり目の対戦が始まった。
 もちろん姫は勝利。
 リョウ君も勝利。
 なんということだ、オタマサまで勝利。
 そして。
 復讐に燃える少女 VS.挑戦を跳ね除けるつもりでいる無敵のオッサンの再戦の結果やいかに!?

 オッチャン2セット連取!!
 どうだ、少女よ!

 「5セットマッチにしましょう!!」

 おお!!
 そのみなぎる闘志、とっても素敵だ!
 でもだからといってオッチャンは手を抜かないぞ!!

 そして運命の3セット目。
 10−10のデュースにもつれ込む白熱した戦いは、11−10で僕のアドバンテージに。このマッチポイント、少女の強烈なスマッシュは無情にもコートの外に飛んでいったのだった。

 おお、ついに僕は5連勝!!
 どうだ、コーチオチアイ!!

 「どうだじゃないですよ。あそこまできたらなんでせめて2セットくらい取らせてあげないんですか。彼女がかわいそうじゃないですか。
 マサエさんも、そんなに勝ってどうするんです、負けを計算していたメンツなのに……」

 あとでこっぴどく叱られてしまった。
 姫とリョウ君は勝つ、でも僕らは負ける。それでうまい具合に試合結果のバランスが取れて、伊平屋中の選手たちの明日のモチベーションに繋がる……。
 そこまで見越していたコーチオチアイの目論みは、張り切りすぎた我々大人のせいで木っ端微塵に吹っ飛んだのだった。
 「まったく、大人げないんだから……」
 でもコーチ、最初に「真剣にキッチリやるように」って言ってたじゃん……。

 いいのだ、僕は負けるのは嫌いだから。
 ああ、このスッキリした疲労感。気持ちよく伊平屋をあとにできるなぁ!!

 こうして練習試合はすべて終了した。
 クロワッサン卓球部with水納小中卓球部対伊平屋中学女子卓球部、すべての対戦結果は??

 18勝2敗!!

 う…………。
 たしかに勝ちすぎだよなぁ……。
 ごめん、ごめんねみんな。
 特に、オッチャンに負けてしまったマイコちゃん、アヤカちゃん、ミサキちゃん、そしてサオリちゃん、みんなブランクがあったからね。オッチャンはここ2週間ほどずっと無敵少女に鍛えられていたからね……。今度やったらきっとオッチャンは負けるだろうからね……。
 リベンジを果せなかったサオリちゃんはとても悔しそうだった。
 大丈夫だ、悔しさが人を成長させるのだから。
 1時のフェリーで島を出るので、一足早く体育館をあとにする彼女に、

 「いつでもチカ先生と一緒においでね。リベンジはいつでも受けるからね!」

 と伝えると、まんざらでもない顔をしてくれていた。本当に来たら楽しいんだけどなぁ……。
 宿代くらいは出してあげるから、チカ先生、無理矢理連れてきてね!

 最後に、みんな揃ったところでハイ、チーズ!!


みんな、本当にありがとう!

 そして最後の最後に、お待ちかね(リョウ君、よく最後までガマンした!)、小さな貝殻やさんからみなさんへプレゼント!!


このときにいたるもなお虎の目だったリョウ君だけど、
けっして不機嫌だったわけではない。

 ごめんね、4つしかないからケンカして奪い合ってね!と言っておいた……。

 すると、なんと伊平屋中学女子卓球部のみなさんからも、キッズ2人へプレゼントが……。

 きっとチカ先生が用意してくれたんだろうけど、いいなぁ、こういうのって。

 こうして、今回の旅行の最大の目的である練習試合は終わった。
 オチアイは悔しそうに、

 「なんだか植田さんのための練習試合になっちゃったなぁ…」

 うむ、たしかに……。
 でも姫はスッキリした顔でこう言ってくれた。

 「楽しかったぁ!!」

 その一言が僕の明日への活力になる。
 中学生相手に5勝1敗と大健闘したリョウ君にとっても、きっと自信になったことだろう。
 いいなぁ、こういうの。
 どこかの離島、もしくは僻地の卓球部のみなさん、どこへでも乗り込んでいくので招待してくれませんか?もちろん旅費はこちらでもつので……。

 おっと忘れちゃならない、最後にキチンとお礼を言っておかねば。
 チカ先生、快く迎えてくれて本当にありがとうございました。
 まさか本当に来るだなんて思ってもみなかったでしょうに、すみませんでした。
 おかげで、大人も子供も、とってもとっても楽しく過ごさせていただきました。
 心よりお礼申し上げます。
 なお、我々が勝ちすぎてしまって、恩を仇で返すような形になってしまいましたこと、伏してお詫び申し上げます……。
 リベンジマッチはいつでも受けて立ちますので、いつでもお気軽に生徒を連れて水納島へお越しください。