1月18日・2

15・ゆらめくサンゴ礁…

 上野から池袋へ向かう山手線の車内で、すでに体のだるさは「気のせい」から本格的に「しんどい…」にステップアップしていた。
 池袋では、うちの奥さんがキンカ堂でアクセサリーグッズのパーツを買い込むことになっていたので、その間僕はどこかをプラプラする……つもりでいた。
 が。
 体が重い。寝てしまいたい。
 しかしこんなところで横になってしまったらいきなりホームレスの仲間入りだ。
 しょうがないので、キンカ堂店内の階段脇にあるベンチに腰を下ろし、うちの奥さんが買い物をしている間休憩させてもらうことにした。
 これからの目的地の厳寒に備えて僕が来ている上着は、昨年アラスカでマイナス32度にも耐えた上着である。東京では過剰ともいえる厚着だろう。
 それなのにときおりふと身を包む悪寒……。
 さ、寒い……?
 この上着じゃなかったらどうなっていたろう…。

 買い物時間があまりに長くなると、いつもなら
 「まだかよ……」
 とイライラしてくるところ。しかしこの日に限っては永遠に買い物していてもらいたかった。
 できることならこのままずーっとここに座っていたい……。

 もちろんそんなわけにはいかない。
 このあとは、池袋の天高くそびえるサンシャイン60――の隣にあるサンシャイン国際水族館に行くのだ。
 一昨年も同じような行程のあとで水族館で人と待ち合わせたのだが、こんぱまるで興奮しすぎたために待ち合わせ時間にすっかり遅れてしまった。今回も遅れると、この先々格好のネタになってしまうことは間違いない。
 待ち合わせ時間の5時は、何が何でも厳守しなければならなかったのである。

 もう多くの方がご存知であろう、うちの奥さんは昔この水族館で飼育係をしていた。
 はたして職場でいかほどの戦力だったのかはわからない。ただ、ジャイアントクラブのような尋常ならざる大きな生き物の巨大さをアピールする際に、対人比のモデルとして欠かせない人材だったことはたしかなようだ。
 退職後もいろいろお世話になっていて、元上司氏をはじめ、彼女と入れ替わりで入社している若い職員の方々も年に1度くらいのペースで水納島に来ていただいている。その元上司氏が、
 「とにかく飲みに来い」
 そう声をかけてくださっていた。お酒のあるところ、我々が顔を出さないはずはない。当初からこの池袋行は旅程に組み込まれていたのだった。

 それに、リニューアル後の水族館を見てみたい。
 うちの奥さんが退職後、一度大々的なリニューアルがおこなわれた水族館についてはかつて旅行記のどこかで紹介したことがある。そして今回、また新たにリニューアルされたという話を昨年聞き、是非一度見てみたい…と願っていた。
 改装されたのは、マリンガーデンの部分、屋上のオープンスペースだ。アシカショーをやっているところである。
 マンボウがいて、ペンギンがいて、アシカやアザラシがいるところ。
 そこが、大々的に改装され、ついに水族館の枠組みを大きく乗り越え………
 「お魚もいる動物園」
 に進化したという。<進化か?<進化なんです!
 アルマジロが、ワオキツネザルが、リスザルが、でっかいネズミの仲間が、大きなペリカンが、そして……
 インコがたくさんいる!!
 ほ〜ら、かつての状態しか知らなかったあなた、行きたくなってきたでしょう??

 そしてもうひとつ、我々が是非見たい、そしてみなさんに紹介したいと思っているコーナーがあった。
 これである。

 我々が訪れたのは閉館間際だったので、すでに催しは終了していたから閑散としているが、日中はこの広場に動物たちをかわるがわる連れてきて、子供たちが動物と触れ合えるようになっているのだ。そしてその広場の名前が……

 まさか、池袋にみんな島があろうとは!!
 もちろん世間的にはエブリワンという意味のみんな島である。でも、実はこの広場の命名会議の際、元上司氏とともに水納島へお越しくださる企画担当の方が、
 「みんな島ってのはどうでしょう?」
 そういってくださって決定したものなのだそうである。
 本当の本当は水納島のみんな島だったのだ。
 クロワッサン型では面積が取れないのでさすがに思いとどまったらしい。
 ともあれ、こうして池袋のビルの上にもみんな島ができた。
 忙しくてなかなか水納島まで行けない…とお嘆きの方々、サンシャイン国際水族館のみんな島で、カメやペリカンに囲まれて慰めてもらってください。

 大改装の場を元上司氏に案内していただいたあと、魚のいる水族館を勝手に回らせてもらうことにした。
 ああしかし…。
 もう歩き回るのがつらい……。
 うちの奥さんが館内を回っているあいだ、浅瀬の魚やヒトデがいるタッチング水槽のところにある段に腰を下ろし、しばらく休憩することにした。
 そこに腰を下ろすと、正面は沖縄・白保の海である。
 すでにハッキリ自覚できるほどの発熱状態の頭で眺めるサンゴ礁の水槽は、浦島太郎が行った龍宮城もかくやというほどだった。やさしくも美しい魚たちがヒラヒラと舞い踊っている。
 すでに他に誰もいない館内で、こうしてゆっくり水槽を眺める……ってのはやっぱり気持ちいいなぁ……。
 朦朧とした頭で眺める水槽は、いつも以上に幻想的なのだった。