水納島の魚たち

ホシゴンベ

全長 13p

 ゴンベの仲間は、名前も可愛いし見た目も可愛いものばかり……

 …というわけではない。

 メガネゴンベもオトナになるとたいそうゴツくなるゴンベだけど、このホシゴンベはさらにその上をいっている。

 なにしろ老成魚ともなれば、そのサイズ15cm超、貫録タップリだ。

 本人はただチョコンと佇んでいるだけでも…

 …見るからにゴツい。

 ホシゴンベのオトナの体の色には微妙な差異が観られるほか、まったく違った色になっている場合もある。

 水納島の海で両者とも観られるから、地域変異というわけではないし、どちらも似たような場所にいるので、生息環境による差というわけでもなさそうだ。

 いずれのタイプであっても、顔の周りにはたくさんの点々模様がある。

 ホシゴンベの名の由来だ。

 ホシゴンベは、リーフ際のサンゴに乗っかり、あたりを睥睨していることが多い。

 遠くからでもすぐそれとわかるくらいにデカいから、探さなくても目に入ってくる。

 でっかい分ドッシリ構えているので、適度な距離を保ってさえいれば、フツーに近寄ることができる。

 ただし、彼が許容している距離以上近づいたり、真正面に回ったりすると彼らは嫌がり、サッと身をひるがえして別のサンゴまで逃げてしまう。

 でっかいくせに、いや、でっかいからこそかもしれないけど、警戒心は強いホシゴンベ。

 オトナになればなるほど警戒心は強く、そのため他のゴンベ類に比べ、オトナの正面顔を拝む機会になかなか恵まれない。

 その点まだ若い子のほうがずっと寛容で、たまに正面からの撮影を許してくれることもある。

 正面顔は、ソバカスなんて気にしないキャンディ・キャンディだった。

 オトナに体色の差異がみられるホシゴンベは、チビターレの頃の体色にも1タイプある。

 1つはグリーンタイプ。

 パラパラと見えるソバカス模様がなければ、とてもホシゴンベとは思えないほど。

 もう少し成長すると、ソバカスが増えてきて、雰囲気もホシゴンベっぽくなる。

 もう1つはレッドタイプ。

 グリーンタイプと同じように、成長するとソバカスが増えてくる。

 チビの頃の体色に関係なく成長するとどちらも似た色になるのか、それとも成長後の姿にも差があるのかは不明だ。

 オトナに比べればどちらのタイプもチビターレは可愛いけれど、ホシゴンベは同じホシゴンベ属のメガネゴンべ同様魚食OKな肉食魚で、小さい頃からすでにプレデターだ。

 だから彼らのそばで油断してしまった哀れな小魚は……

 あっという間に餌食となる。

 油断してしまったキンギョハナダイ・チビターレ、文字どおり一生の不覚。

 こんな獰猛な姿を見せつけられると、ややひいてしまう方もいらっしゃるかもしれない。

 それでもやっぱり、ホシゴンベ・チビターレは可愛いのだった。