写真・文/植田正恵

129.トリムマラソン
月刊アクアネット2014年2月号

 

 最近巷はマラソン流行りである。
 いまや全国津々浦々、規模の大小こそあれマラソン大会がない地域はないといってもいいくらいだ。

 数年前上京したおりに皇居の周りを散策していたら、ジョギングやマラソンの練習をしている人たちがまるで流星群のようにたくさいんいたので驚いたものだった。
 沖縄県内もまた同様で、たまに本島に出ると、沿道で走っている人をフツーに見かけるようになっている。

 かくいう私も昔から走るのが好きなので、近頃は年に1度は県内の何がしかのマラソン大会に出るようになっている。
 そんな私にとって重要なマラソン大会のひとつが、水納小中学校の校内トリムマラソン大会だ。

 毎年2月の末に開催されるこの大会は、小学校低学年が1km、高学年が1.5km、中学生が2.5kmと、マラソン大会というわりにはかなり短い距離ながらも年齢別にコース設定がなされている。
 ただ、いかんせん児童生徒の数が少ないので、運動会同様可能な限り先生や地域の人々も参加するのがもっぱらだ。

 そんな恒例行事に、もうかれこれ15年近く参加し続けている。私が参加するのは中学生と一緒に走る2.5kmコースで、最初の頃は連絡船の船員さんをはじめとする島の若手(?)の多くが参加していた。

 ところがみなさん寄る年波か、近年の彼らは参加してもせいぜい1kmとか1.5kmのコースになってしまっているため、ここ数年の2.5kmコースは、マラソンが得意な先生数人と、我々夫婦と中学生ということになっている。

 私が子供の頃のマラソンといえば、あくまでも着順を競うのが普通だった。しかし平等教育の賜物なのか、いまや学校のマラソン競技はトリムマラソンなのだ。
 トリムといえば、事前に申告しておいたタイムとの差を競うのが基本で、着順の優劣はまったく関係がない。

 そのため知恵がついている中学生ともなると、わざわざ限界ギリギリではなく気持ちよく走れるタイムを申告し、それを目標にマイペースで淡々と走るのである。

 一方、いい歳をした我々オトナは、トリムマラソンだと言っているのにムキになって着順を競う。
 その勢いに生徒たちが引っ張られてくれれば面白いところ、そもそも生徒の人数が少ないこともあって(今年は
3人)結局先生と我々の対決の様相を呈してしまい、大人たちだけがそれこそ命からがら走っている。
 なんだか誰のための大会だかわからなくなっているのだった。

 そんなささやかな大会ではあるけれど、島のおじいおばあは毎年沿道から声援を送ってくれる。
 学校が準備したお茶を飲みながら、彼らが「今年は誰が1番かねえ」なんて談笑している姿を見るのも、私の楽しみのひとつでもある。

 巷で流行の全国津々浦々のマラソン大会とは違い、観光客誘致といった経済とはまったく無縁な地域のイベントではある。
 それでもこの校内トリムマラソンもまた、それはそれで欠かせない毎年恒例の行事なのだ。願わくは、オトナゲない大人にムキになって挑戦する中学生がいてくれれば、もっと楽しいのだけれど……。

 今年もトップでゴールすべく、未舗装道路でつまずかないようにしながら、畑仕事中のおばぁに応援されながら、来たるトリムマラソン大会に向けて走りこむ私なのだった。