写真・文/植田正恵

192.無農薬野菜の猛襲
月刊アクアネット2019年5月号

 我が家の隣にある百坪ほどの畑を毎冬せっせと丹精しているR氏は、私と同様趣味で野菜を作っている。

 そのR氏が「大根葉を庭に置いといたから食べてね」と、桟橋にいた私に声をかけてくれた。

 大根葉の独特の風味が大好きな私は大喜びで家に帰ったところ、庭先を見てびっくり。

 そこには大根葉の小山ができていた…。

 R氏の場合は趣味といっても、シーズン中にお客さんに出す軽食メニューの食材という実用・実益も兼ねていることもあり、食材用に種類を限定して大量に作ることを好む。

 私がおよそ30坪くらいの畑でこまごまいろいろ多様な野菜を30種類くらい作っているのに対し、彼の場合は百坪で6,7種類。
 間引いた大根の葉といえどその量は大量になり、私がおこぼれに与かれるというわけだ。  

 毎冬私が借りている畑の近くで、ジャガイモを作っている農家の方がいる。
 私は時間が許すかぎり毎日畑に行くため、たいていの場合その収穫時期にも居合わせることになる。

 大量のジャガイモの収穫ではどうしても出てくる、傷ついたり虫に食われたりしているものは、商品として出荷するわけにはいかない。
 すると近くにいる私に、

 「持って行って!傷ついているから早めに食べてね」

 と渡してくれる。
 その「不合品」のジャガイモは、軽く5sを超える半端ない量だ。
 私が畑で作っているジャガイモよりも多いんですけど…。

 こうなると私は、せいぜい30坪ほどしかない畑の一画を割いて、わざわざジャガイモを作る必要があるのだろうか? という根源的素朴な疑問すら抱くことになる。  

 今ではお星さまになっているおばあやおじいが元気に畑仕事をしていた20年ほど前は、島内のいたるところでそれと同じようなことがあった。

 おかげで冬の我が家はあるときは大根まみれになり、しばらくするとインゲンの波状攻撃に遭い、最後に駄目押しの人参大洪水になったりと、畑仕事をしていなくても今の時期は何が旬なのか手に取るようにわかるほど、各方面から同じものを大量にいただいていたものだった。

  何を隠そう、それらいただいた採れたて無農薬野菜の美味しさに感動したことがきっかけで、野菜作りを始めた私である。

 そのコンセプトは「商店街の八百屋さん」。

 いつでも店頭に各種野菜が並んでいる八百屋さんのように、多くの種類をなるべく長期間楽しめるよう、畑に植える種類や順番など、いろいろ工夫をしている。

 それはすなわち、ひとつの種類を一度に大量に作る水納島の伝統(?)農法とは真逆のやり方でもあるので、私の畑には他に誰も作っていない野菜や、他の畑ではピークが過ぎているのにまだ瑞々しいままでいる野菜などが出現することになる。

 最近ではほとんどのおばあが畑仕事を引退しているから、そんな採れたて野菜をちょくちょくおすそ分けすると、それこそ飛び上がらんばかりに喜んでいただける。

 そしてなんと件のジャガイモ農家さんからは、「サニーレタス少し分けてもらえない?」なんてリクエストを受けることも。
 農家からリクエストをいただけるとなれば、野菜作り歴20年の私もようやく一人前?

  多種少量栽培は手間が余計にかかりはするものの、無農薬で作られた多様な採れたて新鮮野菜はホントに美味しい。
 それをウリにすれば、冬でもお客さんを呼ぶことができるのではなかろうか。

 民宿や飲食店を経営しているR氏に、今度提案してみよう。