写真・文/植田正恵

193.むんじゅる笠
月刊アクアネット2019年6月号

 本土に比べ圧倒的に日差しが強い沖縄では、日除け対策は重要だ。

 伝統的な日除けグッズのひとつクバ笠は、現在でもホームセンターなどで比較的リーズナブルなお値段で実用品として売られている。

 クバ笠とはクバ、すなわちビロウの葉を重ね合わせて作られており、今でこそ民芸品扱いながら、かつては昭和の世の麦藁帽子のごとく、沖縄では世間一般で広く利用されていた。  

 同じく沖縄の日除けの笠に、むんじゅる笠というものもある。

 むんじゅるとは麦藁のことで、水納島のお隣の瀬底島は粟国島と並ぶむんじゅる笠の二大生産地という歴史もある。
 しかし麦作農家が減り、なおかつ廉価でファッショナブルな日除けグッズが世に出回っている現在では、むんじゅる笠は舞踊の衣装として現役ではあっても(むんじゅる平笠)、世間の暮らしからは姿を消しつつある。  

 オフシーズンの畑仕事に何かいい日除けアイテムはないか…と探していた私が、このむんじゅる笠の存在を知ったのは、15年ほど前のことだった。

 これだ!と思った私はさっそくお隣の瀬底島に出向き、とある商店で手に入れた。
 当時すでに瀬底島では作者がお2人だけになっていたむんじゅる笠、使ってみるとなかなかのスグレモノで、細い麦わらを並べて笠にしてあるため軽く、わずかに空いた隙間のおかげで風通しがとてもよい。

 購入以来、機能・効能・外観ともにとても気に入り、畑仕事には手放せなくなった。

 それから10年以上経ち、つかんだだけで麦わら部分がポキポキ折れてしまうほどに劣化してしまったので、かつての商店を再訪してみた。
 すると、お店ではもう在庫を置かなくなっており、注文してからの取り寄せ、もしくは直接作者を訪ねてオーダーするしかないとのこと。

 瀬底島にはそうちょくちょく訪れる機会があるわけではないからその場での注文は諦め、きっとどこかでむんじゅる笠に出会えるはず…と期待しているうちに数年が経ち、むんじゅる笠は破れ傘のようになってしまった。  

 それでもまだしぶとく使用していた昨オフのある日のこと。
 連絡船に乗るというおばあを軽トラで桟橋まで送ったところ、助手席に乗せっぱなしにしてあるむんじゅる笠を見たおばあはとても懐かしがりつつも、あまりの傷み具合いに驚いていた。

 新調したくとも、もうおいそれとは手に入れられないことを説明すると、なんとおばあは作者に直接オーダーしてくれるという。
 彼女は瀬底島出身で今でも親族を訪ねる機会がちょくちょくあり、現在唯一人になっているかもしれない作者は、姪っ子さんの嫁ぎ先の方だから昔から知り合いなのだそうだ。

 思いもよらない渡りに船話である。

 それからひと月ほど経った頃、おばあはもう忘れちゃったかな?と半ば諦めていたところ、

 「明日瀬底島に行くけど、本当にむんじゅる笠買うねえ?」

 と、おばあがわざわざ確認しに来てくれた。
 注文してくださっていたものが、もう出来上がっているそうだ。

 買います買います、もちろん買います!

 というわけで私のむんじゅる笠は、このたび15年ぶりに新調された。
 おばあによると、作者はすでに齢90を越していることもあり、(売り物としての)むんじゅる笠を作るのはこれが最後、とおっしゃっていたとか。

 そんな貴重な笠を手に入れることができて、感謝感激、ますます畑仕事に精が出る、というものである。