写真・文/植田正恵

201回.ありがたき海底水道管
月刊アクアネット2020年2月号

 昨年は台風のために日本のあちこちで大きな水害が起きた。

 埼玉の私の実家の近くにある入間川も氾濫し、父が丹精込めて整備している河川敷の公園グランドもまた大きな被害を受けたようだ。

 父によると、過去にも何度かあった台風などの大雨の被害とは、けた違いの規模だったという。

 おそるべし、サバイバル気象。

 とはいえ昨年のように度を越して降ると災いしかもたらさない雨も、降らなきゃ降らないでえらい騒ぎになる。  

 沖縄はほぼ毎年強大に発達した台風が通過するので、短時間でまとまって雨が降ることが多い。

 それでも大規模な水害が起こらないのは(道路の冠水などはしばしば起こる)、河川が短いためにあっという間に海に流れてしまうからだ。

 ただし裏を返せば、どれだけたくさん雨が降っても、保水能力の無さすぎて水不足になりやすい、ということでもある。

 実際、かつては他県から自衛隊が水を運ぶ事態になるほど深刻な水不足もあったほどだ。

 そこまでひどくはなくとも、学生の頃には夜間断水を経験したこともある。
 当時の沖縄県民にとって水不足はまだまだかなり身近な問題で、一般家庭や集合住宅の屋上には、断水に備えた水タンクの設置が必須でもあった。

 しかしその後憑りつかれたようにダムを増やし続けた結果、雨後のタケノコのように次々に建つ立派なホテルでどれほど水を使おうとも、近年の沖縄本島では本格的な水不足になったことはない。  

 かくいう水納島は、昔は「水無島」と書いたという話もあるくらい、水に苦労した島だった。

 今でこそ島のどこでも蛇口をひねれば当たり前に水道水が出るけれど、ほんの半世紀ほど前は、島に2箇所ある井戸の水(といっても海水混じり)と天水に頼っていたという。

 そのため昔ながらの家の敷地内には今も、天水用のコンクリート製貯水槽がある。

 当時のことをよく知る島の方々によると、畑で水を大量に必要とする際には夜中に井戸まで水を汲みにいったことがあるとか、洗濯をするのに毎回井戸まで来ていた、という水にまつわる苦労話が多い。

 それを思えば、現在の水事情はどれほど便利になっていることか。

 それもこれも、本島から瀬底島経由で通じている総延長10q弱の海底水道管のおかげだ。  

 本島から水納島に届いている海底水道管は、その間の海底がほぼ砂底のため、現在ではそのほとんどが埋まっていると思われる。

 しかし水納島近辺になると海底でむき出しになっていて、ダイビングやスノーケリング中にちょくちょく目にすることになる。

 ゲストにはそれが水道管であることを案内しつつ、「この水道管を壊したら、今晩シャワーも夕飯も抜きになりますよ」と冗談を言いはするものの、どんなにストロングな台風が暴れようとも、これまで一度としてこの水道管が破損したことはない。  

 ところが不思議なことに陸上となると、本部町内だけでも水道管を敷設し直す工事がほぼ同じ場所でやたらめったら繰り返されている気がする。

 40年間海底放置プレイでまったく問題が無い水道管があるというのに、そこまでこまめに何度も敷設し直す必要がある水道管って、いったいどれほど脆弱な材質なんだろう?

 先だってまた同じ場所で行われていた工事は「地震に強い水道管を敷設しています」とあった。

 いったいいつ沖縄で地震による水道管被害が出たんだろう?

 そのうち「隕石が衝突しても大丈夫な水道管を…」なんて工事も始まるかもしれない…。