水納島の野鳥たち

ノビタキ

全長 12cmほど

 キビタキをついに記録に残せた翌日も、また会えはしまいかと期待して同じ場所を再訪してみたところ、キビタキの姿はまったく見えず。

 早くも旅立ってしまったのだろうか。

 そのかわり、当時現役だったマサエ農園畑2号に、見慣れぬ鳥さんの姿が見えた。

 これは初見間違いなし!

 すぐに逃げちゃうと思って慌ててジョニーを取り出したものの、すっかり畑2号を餌場としているらしいその鳥は、こちらの様子を伺いつつも遠くへ逃げ去ることなく、その姿をたっぷり拝ませてくれた。

 どうやらノビタキのオスのようだ。

 ジョウビタキのメスがジョビ子なら、ノビタキのオスはのび太か?

 図鑑などの写真で見るよりもお日様の下で実際に観ているほうが白黒のメリハリが強く、やけにクッキリハッキリ見えてカッコイイ。

 前を向くと…

 胸のあたりがほんのり褐色に色づいている。

 図鑑によると冬季に県内各地で観られはするものの数は少ないそうで、少なくとも我々が水納島でその姿を目にするのは初めてのこと。

 この2019年秋から2020年春にかけてのオフシーズンは、終盤になるまで「おっ?」となるような鳥さんになかなか会えなかったのだけど、最終盤の4月になってキビタキに続きノビタキと、なんだか俄然にぎやかになってきた。

 ノビタキはジョウビタキ同様の食生活のようで、地面で採餌しては、草の穂など見晴らしの良いところに止まる。

 オタマサが畑に立てたワイヤーメッシュは沿道の草木に比べてさらに高さがあるからだろう、お気に入りの止まり木にしていた。

 その日の夕刻、プチトマトを収穫するオタマサとともにもう一度畑2号を訪れてみると、ここにはのび太が2人いることがわかった。

 冬鳥でありながら冬の間水納島にはいなかったことからして、おそらくさらに南国からの旅の途上だろう。

 水納島にはきっと束の間の滞在に違いない。

 結局その年の出会いはこの日限り、そしてこの日から3年経った今も、ノビタキとの遭遇はこの日だけ。

 ひょっとしたら水納島にいたのは後にも先にもこの日1日だけってことになるかもしれず、その貴重な日に居合わせることができて良かった良かった。

 追記(2023年12月)

 その後もオスとの再会は果たせていないけれど、今年(2023年)はメスとの遭遇があった。

 4月、サンコウチョウと遭遇した直後のことで、興奮覚めやらぬまま帰路についていた際、救急ヘリポートとして整備されている芝生上に姿を現していたもので、当初は正体がまったくわからず、図鑑では埒が明かなかったからグーグル先生に尋ねてみたところ、ノビタキのメスらしいことがわかった次第。

 それにしても、オスとは随分違って見える…

 …と思ったら、隠れていた背中の模様が風に吹かれて露わになると、オスそっくりだった。

 毎年4月5月には去るもの来るものが短期間滞在してくれることがあって、その短期間に当たると1日にいろいろな鳥さんが目白押し、なんてことがちょくちょくある。

 サンコウチョウと遭遇した直後にノビタキのメス、どうやらこの日もそーゆー日だったようだ。

 そんな日にのんびり散歩することができたのは、時化のために連絡船が欠航していたおかげ。

 ライフラインが欠航すると島民としてはいろいろと困ったことも多いとはいえ、こと鳥さんたちとの遭遇に関しては、時化に欠航に感謝感謝。