水納島の野鳥たち

リュウキュウアオバズク

全長 30cmほど

 長期に渡って本島地方を暴風圏内に留めたZターン台風のために、島内は奇跡的に停電こそなかったものの、あちこちで枯木が倒れ電線や電話線にのしかかる被害が出ていた今年(2023年)8月上旬のこと。

 10日連続の欠航が明け、ようやく日常を取り戻してカメさんたちのエサ採りをしていたところ、沿道の林からバサッ…と猛禽系の鳥が出てきて、枝に止まった。

 猛禽系といってもサイズ的にツミかなにかかな…と、思ったのだけど、ツミにしてはこちらに正対してジッと見つめている表情に何か違和感がある。

 はて、何が変なのだろう?

 あ!

 両目が完全にこっちを向いている!

 すなわち猛禽は猛禽でも、ワシ・タカ系ではなくミミズク・フクロウ系だ。

 そしてこのサイズと色味となれば、それは…

 リュウキュウアオバズク!

 日が暮れると島のそこらから「ホウ…ホウ…」と毎晩のように声が聴こえるから島にいることはわかってはいても、夜中にその姿を目にするのはムツカシイ。

 過去に一度、旧我が家で暮らしていた頃に、ゆんたくにお越しになったO野さんが開口一番「フクロウみたいなのが電線に止まってましたよ」と教えてくださった際に目にしたのは、リュウキュウアオバズクだったか、リュウキュウコノハズクだったか…。

 そんな大昔の話はともかく、早朝とはいえもう日が昇っている時間帯に、リュウキュウアオバズクに出会えるなんて!

 …という千載一遇の大チャンスに、まさかのコンデジ無し。

 目に焼き付けるしかないので見ていたところ、ジッと正面を向いていた子はバサッと羽ばたいて飛んでいった。

 その飛んでいった方向とは全然違うところに、もう1羽いた。

 見た感じ若鳥っぽいから、さきほど飛び去ったのは親鳥だったのだろうか。

 若鳥だからなのか、近寄っても慌てて逃げることなく、親がいるあたりに向かってピーピー呼び鳴きしていた。

 ひょっとしたらこの若鳥、これから家までカメラを取りに行って戻ってきても、まだ同じ場所に居続けているかも。

 まぁおうおうにしてそうは問屋が卸さないものながら、この千載一遇の大チャンスに際しては、とにかくやれるだけのことはやった感が必要だ。

 そこでダメ元でカメラを取りに家まで戻り、再びそっと訪ねてみた。

 すると…

 いた!!

 随分昔の夜に観たのがリュウキュウアオバズクだったにしても、こんなにじっくりはっきりちゃんと観られたという意味では人生初記録。

 それにつけても、まっすぐこちらを見つめる目ときたら!

 近年激増中のケモノでヤカラな日本人観光客たちよりも、よほど知性を感じさせる深い瞳…。

 こうして下を向いているときは暗いから瞳孔が開いていても、明るい上を見上げると、瞳孔はすぐさま閉じて黒目が小さくなる。

 目が大きいだけに、瞳孔のサイズ変化がハッキリしている。

 鬢(?)のあたりにポワポワの名残りの羽毛があるように見えるし、容貌にまだ幼さが残っているから、これはやはり若鳥なのだろう。

 この若鳥が見上げているあたりに親鳥がいるらしく、親が呼ぶ声に応えているのか、この若鳥はしきりに呼び鳴きをしていた。

 周囲にいる他の鳥の声で紛らわしいけれど、口を開けているときに発しているのがリュウキュウアオバズクの呼び鳴きっぽい。

 「ホウ…ホウ…」としか鳴かないのかと思ったら、このように「ピー…ピー…」と鳴くこともあるのだなぁ。

 若鳥の視線の先、もう少し高いところにある電線に、親鳥の姿があった。

 やはり親ともなると、自然下で長年生きているだけにその眼光はスルドイ。

 眼光はスルドイけど、生きているだけに…

 ウンチもする。

 ところで、このまさかの早朝登場は、住処にしていた木が台風で倒れてしまい、早めの巣立ちを余儀なくされたためなのかも。

 となると、親子はすぐにでもこの場から離れてしまうか…

 …と思いきや、後日再びカメのエサ採りのために訪れたところ、ほぼ同じ場所で同じように親子の姿を観ることができた。

 このように子育てをしてくれれば、明るい時間帯でもその姿を拝むことができる…ということなのだろうか。

 その後は姿を見かけることはなくなったけれど、今年も毎晩どこかで「ホゥ…ホゥ…」と鳴き続けているリュウキュウアオバズク。

 実はザ・アオバズクも夏季に沖縄まで渡ってくることがあって、シロウト目にはこの亜種間の差異がまったくわからないという。

 なので、ここで紹介している子たちが本当にリュウキュウコノハズクなのかどうかは不明なのだけど、夏だけではなく通年ホゥ…ホゥ…鳴いているくらいだから、姿を見せてくれたのもきっとリュウキュウアオバズクなのだろう…と勝手に納得している。