本編・16

散歩写真館

 部屋を辞し、階下の郵便局に降りると、誰もいない窓口で人がずっと待っていた。
 さっきのアラスカヤマイヌの飼い主だった。
 アラスカで暮らす白人…
 というイメージどおりの青年だった。
 イメージどおりなのだが、行きの飛行機でコ・パイロットの席に座っていた人と似ている。ここでは誰も彼も同じようになるのだろうか……。

 我々が2階で話しこんでいた間、そのアラスカ青年はずっと無人の窓口で待っていたらしい。
 「待たせてすみません」
 というと、彼は陽気に微笑み、手紙を読んでいただけだから、といってくれた。
 ここでは、「待つ」ということは苦でも何でもないことのようだ。

 郵便局からすぐのところにあるピートの家に行った。
 彼の家の玄関口にある置物を間近で見たかったのだ。
 ある置物とはこれ。

 これは絡み合った2頭のムースの角だ。
 繁殖期のオスは、ほぼ1ヶ月もの間、餌も食べずに来る日も来る日もメスを巡る激しい戦いをライバルと繰り広げるそうだが、その際、複雑に入り組んだ角が絡み合ってしまい、そのまま外れなくなって両者リングアウト負けになることもあるという。
 そういったことを星野道夫の本で読んで写真でも見ていた。よもや本物を間近で見られるとは思っても見なかった。

 近くのコユクック川に行った。やはりこういう広大な景色をバックにするならこれでしょう。

 そしてやっぱり……

 アラスカの大地には琥珀色の液体がよく似合う……。
 これ、この日は曇っていて寒々しいけど、晴れていると雰囲気が全然違う。

 ね。
 翌日は晴れていたのだ。でも、実は晴れているこの日のほうがメチャクチャ寒かった……。
 そして、沖縄のお酒も負けてはいない。

 おー、雪に泡盛………。アラスカの大地に立つ瑞泉ここにあり。
 瑞泉酒造さん、この写真買わない??
 おいおいおい、一升瓶を持っていったのかよアラスカに、と思っている方は、次の写真を見たらさらに唖然とするに違いない。

 南国戦隊アワレンジャー!!

 実はこれ、那覇空港出発前に土産物屋で買ってきた品で、お土産用のミニチュアボトルセットである。ロッジのスタッフへの手土産用に持ってきたのだ。
 せっかく持ってきたので、アラスカの大地で写真に収めておくことにした。胃袋には収めていないからご安心を。
 だから、こんな写真も

 こんな写真も撮っていたりする。

 散歩写真館とかいって、酒ばっかじゃん……。
 アラスカでこんなバカなことやっているヤツが他にいるのだろうか……。
 この後、この南国戦隊アワレンジャーのおかげで、僕はとっても疲労することになるのだった……。