50・恐るべし、観光地価格

 芸術や科学技術の復活はルネッサンスまで待たねばならなかったけれど、我々は待つわけにはいかなかった。

 お昼ごはんを。

 そろそろこのあたりでお昼にしておかないと、このままコロッセオに行ってしまったら随分遅くなってしまう。

 とはいえ観光地のど真ん中ともいえるこの周辺に、ここ!というようなお店はなかなかない。

 それでも一応、だいたいこのあたりでお昼になるだろうと見越して調べてはいた。
 ただ、何を食べたいってわけじゃなくとも、良心的なお値段の店となると、やはり観光地のど真ん中からは多少は離れたところになる。
 多少といっても目と鼻の先なので、とりあえずそこを目指すことにした。

 …のだが。
 約一名、このまま歩き続けるとエネルギー切れを起こしそうな人が……。

 おりしも、いかにも観光客向けといった料理屋さんの前を通りかかっているときだった。

 愛想良さそうなオネーサンが呼び込みをしている。
 でも僕たちには目指す場所があるのだ!

 だから通り過ぎようとしたものの。
 このまま歩き続けてエネルギー切れを起こされるよりは、多少高くても適当にこのへんで入っておくか。

 そう思い直し、断ったばかりのさっきのオネーサンに、やっぱ入りますというと、まぁこんなに愛想よくできるものかいなというくらいの笑みを讃えて席に案内してくれた。

 ワインをグラスで頼みつつ、3人それぞれパスタを頼んだ。

 もちろん父ちゃんはボンゴレ。うちの奥さんはカルボナーラ、そして僕はカーチョエペーペ。

 このときが僕のカーチョエペーペ初体験だったから、それなりに美味しくいただけた(その晩ガレリア・シャッラでカーチョエペーペを食べなおしてみたら、全然違った!)。
 フムフム、観光地のど真ん中とはいえ、けっこう美味しいじゃないか、フムフム……。

 そうやった舌鼓を打ちつつ、グラスワインでいいコンコロ持ちになって、シメのカフェなどを飲んでお会計。

 87ユーロ!?

 た、高ッ!!

 いくらグラスワインを頼んだとはいえ、パスタ3皿でこの値段!!

 そして、入店する時にはあれほど愛想よかったカメリエーラやカメリエーレたちは、新たな客ゲットに忙しいあまり、去る時には愛想もクソもない。

 恐るべし、観光地のど真ん中。
 というか、ちゃんと下調べをして、お店の見当をつけておくという重要性を、今さらながら身をもって知ったのだった。

 ま、オシャレな内装、それなりの料理、そして窓から……

 コロッセオ。
 こういうロケーションで、地元民が行くような大衆食堂的値段を求めるというのが、そもそも無理があるということか。
 首里城内のレストランのそばの値段が高いと騒いでいるようなものだものなぁ。

 さあて。
 腹もくちたことだし、そろそろ行こう、あのコロッセオへ!!